現象の奥へ

【詩】「スカース(Skaz)」

「スカース(Skaz)」


サリンジャーなんてすきじゃなかったが、私の青春を振り返ると、雑草のようにサリンジャーが生えていたな。

Old Sally didn't talk much, except to rave about the Lunts,

because she was busy rubbering and being charming.

『赤頭巾ちゃん気をつけて』なんて東京の良家の高三が学生運動のせいで東大の入学がなくなった年のモラトリアム生活を饒舌一人称で綴った小説に夢中になっていたが、のち、

サリンジャーのパクりと言われた。

サリンジャーって?

なるほど似たような文体だ。これを、

文学用語で、スカースというそうだ。

Skaz、ロシア語。

と、『小説の技巧』でデイヴィッド・ロッジが書いていた。そして、

去年かその前か、そのサリンジャーが出てくる映画を見て、そして、

サリンジャーは出ないが、いかにもサリンジャー的なニューヨークの少年が精神的におとなになる映画も見て、そこに、サイモンとガーファンクルの音楽があって、なにか妙に、サリンジャー的な気分になった。そしてやっと、サリンジャーが理解できた、

ような気がした。その、生い茂っていた

雑草の意味が。

Then, all of a sudden, she saw some jerk she knew on the other side of the lobby.