現象の奥へ

Entries from 2020-10-01 to 1 month

渡部直己著『日本小説批評の起源』──名著『日本文学評論史』(久松潜一著)の存在をまったく知らないようである。(★)

『日本小説批評の起源』(渡部直己著、2020年6月26日、河出書房新社刊)──名著『日本文学評論史』(久松潜一著)の存在をまったく知らないようである。(★) 本書の決定的瑕疵は、「批評」と「評論」が分かたれてないことである。著者(と関係編集者)はどう…

【短編を読む】中島敦「狐憑」「木乃伊」

2020.10.29 中島敦「狐憑」「木乃伊」「狐憑」(400字詰め16枚) 1,物語の内容、語り方、まるでボルヘス。 2,50年生きれば、ボルヘスになれた? 「木乃伊」(400字詰め14枚) 1,ボルヘスを超えているとも言える。 2,描かれている世界が広大で、主題が知…

【詩】「ミケルアンヂェロ、あるいは、羽仁五郎」

「ミケルアンヂェロ、あるいは、羽仁五郎」 羽仁五郎と言えばすぐに思い出すのがガールフレンド、花柳幻舟。旅芸人の生い立ちだったか、日本舞踊を身につけたが、家元制度が立ちはだかって、「天誅!」と叫んで刃物を向けた、名前は忘れた家元のオバサンに。…

【短編を読む】泉鏡花「蝿を憎む記」

泉鏡花「蝿を憎む記」 2020.10.27 泉鏡花「蠅を憎む記」(1901)(400字詰め11枚) 1,たかが蝿が飛んでいる様子をここまで濃やかに描けるか。 2,それが皮肉やユーモアを生む。 3,省略の美。 4,一二〇年近く前の作品なのに驚き。 5,事情などなにも説明な…

【詩】「ボードレールが地獄を去る日」

「ボードレールが地獄を去る日」 T.S.エリオットは、ボードレールの散文は詩より重要だと言っている。ゲーテは健康を、ボードレールは病的なものを求めたが、どちらも古くさいとも言っている。 しかして、ボードレールは、地獄を去る。 しかしこの地獄、ダン…

『ストレイ・ドッグ』──ニコール入魂の一作(★★★★★)

2020/10/24@キノシネマ天神 『ストレイ・ドッグ』(カリン・クサマ監督、 2018年、原題『DESTROYER』) 30年前なら、デ・ニーロあたりが演じたような役を、ニコール・キッドマンが演じる。色は売らない。スカッとするような解決もない。シャーリーズ・セロン…

【短編を読む】芥川龍之介「南京の基督」

芥川龍之介「南京の基督」(1920)(400字詰め30枚) 1,ありそうな寓話であるが、中国少女の娼婦の具体的な描写が興味を引く。エロチックかつ牧歌的、清純かつ猥雑。 2,こういう作品は、今の作家には描けない、描ける力量も教養もないと思われる。描けばま…

【短編を読む】久生十蘭「母子像」

【短編を読む】久生十蘭「母子像」(1953.7)400字詰め27枚。 1,なにがなんだかわからないまま突然始まるが引き込まれる。 2,時おりの情景描写がおもしろい。 3,「戦争の悲惨さ」などというものを超えた、ありのままの描写が文学の豊かさを獲得。

【短編を読む】中上健次「JAZZ」

【短編を読む】2020.10.21中上健次「JAZZ」(400字詰め13枚)(1966.12) たった13枚を10章に分けた、小説というより、詩のようである。しかし、やはり、小説にしているのは、なんであろうか? 「俺」という存在のリアルであろうか?

『博士と狂人 』──メルとペンが浮かび上がらせる言葉の世界(★★★★★)

(2020/10/19@キノシネマ天神) 『博士と狂人』( P・B・シェムラン監督、2018年、原題『THE PROFESSOR AND THE MADMAN』) メル・ギブソンとショーン・ペンが共演と知って、またどんなアクション映画? と思ったが、意外やオックスフォード辞典編纂の物語だ…

【絵】「ベラスケス『小間使いたち』」

「ベラスケス『小間使いたち』」 (@プラド美術館にて拝見)

「ハムレット」 いまだおれは エルシノア城で亡き父の亡霊を待っているのか 世間はやがてCOVID-19を運ぶこうもりの飛び交うハロウィーンだというのに 文法の編み物 ポンジュを投げ捨て 学友に会いに ノルウェーに飛ぼうか? ホロコーストは鍋の中で煮られ 誰…

詩集宣伝(笑)。

「山下晴代さんの『鴉』1500円はぜったいお買いどくです!芭蕉翁の到着を待ちながらさまざにまないてみる鴉。なないろの恋。」(細田傳造(中原中也賞、丸山薫賞、さいたまナントカ賞詩人) https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=1038610120

『スパイの妻<劇場版> 』──学芸会レベル(★)

『スパイの妻』(黒沢清監督、2020年、英語題名『WIFE OF A SPY』 蓮實重彥は、黒沢明のことを二流だと言った。さもありなん。近頃、「世界」では、クロサワと言えば、この「清」らしいけど、それはどこから出た「噂」なのか(笑)? 悪いけど、この映画、ベ…

【絵】「ダヴィンチの『受胎告知』」

「ダヴィンチの『受胎告知』」

【絵】「ある女の肖像」

「ある女の肖像」

【雑誌評】『Ultra Bards(ユルトラ・バルズ)』(Autumn 2020 vol.34)

『Ultra Bards(ユルトラ・バルズ)』(Autumn 2020 vol.34)(毎回、書名は、イミフ) 薄い冊子であるが、本文文字は、葡萄色で、大きさも、180円のスマートレターには微妙に入らないサイズで、370円?のレターパック・ライトで送るしかない。そして、原稿…

【詩】「さる文豪の死」

「さる文豪の死」 墓碑銘は玩亭墓秋のてふ 古びたる量子力学コロナ以後 ひがなヂヨイス追いたる秋のてふ 倫敦で本を買ひたる秋のてふ 発句重ね現代詩になるか秋のてふ 扇もてウインダミアの秋のてふ 余韻にてちようへん小説書き初むる 文豪も肉体なくし風邪…

『シカゴ7裁判』──「コロナ時代」から見た1968(★★★★★)

『シカゴ7裁判』(アーロン・ソーキン監督、2020年、原題『THE TRIAL OF THE CHICAGO 7』 (2020/10/10@キノシネマ天神) 「アメリカ人であることが恥ずかしいと思った」(スーザン・ソンタグ) 1968年と言えば、世界的に「革命」が起こった年、アメリカでも…

【詩】「時間の入れ歯」

「時間の入れ歯」 ウィーンにおけるフロイト最後の日々を描いたあの映画の一場面に、 「あ、おとうさま、入れ歯がズレてますわ」と同じ精神分析医になった娘が、父の入れ歯を直す場面があった。 事実フロイトは癌のために大幅に上か下かの顎を切除する手術を…

【絵】「空」

【絵】「空」

【短編を読む】室生犀星「寂しき魚」

室生犀星「寂しき魚」(400字詰め16枚) 1,あくまで魚と沼の話から離れず、丁寧に描写していく集中力。たかが魚の死を、ブロッホの大作『ウェルギリウスの死』を彷彿とさせるような深さと表現。 2,生の不条理を、自然描写で表現。

【短編を読む】森鴎外「吃逆(しやくり)」

森鴎外「吃逆(しやくり)」(400詰め20枚、1912.5) 1,「かのように」などの、連作のようであるが、やはり鴎外の特徴の、外国語原語を、果たして読者が解するかどうかなど気にせず、どんどん登場させ(parvenu=成金、のごとく)、背景のスノビズムを表現…

【短編を読む】三島由紀夫「サーカス」

【短編を読む】三島由紀夫「サーカス」(400字詰め18枚) 「大興安嶺に派遣された探偵の手下であった」といとも簡単に表現されるが、曰くありげな過去を持つサーカスの団長に虐げられる、薄幸な曲馬乗りの少年と綱渡りの少女の話を、団長の捻れた愛の寓話と…

【短編を読む】三島由紀夫「中世に於ける一殺人者の遺せる哲学的日記の抜粋」

【短編を読む】三島由紀夫「中世に於ける一殺人者の遺せる哲学的日記の抜粋」(1943.2、400字詰め換算23枚) 「殺人者の日記」であるが、むしろ、殺された者たちの様相をアフォリズム風に描写。日本の中世なのだが、どこか洋風の雰囲気で、殺人者と、友…

本店リニューアルのお知らせ

本店リニューアル。 渋い。 きてね。 http://www.mars.dti.ne.jp/~rukibo/

【昔のレビューをもう一度】『ロープ/戦場の生命線 』──センス抜群のおとなのおハナシ(★★★★★)

『ロープ/戦場の生命線 』(フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督、2015年、原題『A PERFECT DAY』 2018年2月18日 20時54分 解説と題名を見てしまうと、いかにもお堅い映画のようだが、全然ちがう。ベニチオ・デル・トロの男臭い魅力爆発の、恋愛映画な…

『ミッドナイトスワン』──草薙剛の「引き」の演技がすばらしい(★★★★★)

『ミッドナイトスワン』( 内田英治監督、2020年)(2020/10/1@キノシネマ天神) 労働者の息子がバレエを習い始め才能に開花し、反対していた父親も最後は応援してくれ、ニューヨークシティバレエだったかのプリンシパルにまでなる映画、『リトルダンサー』…

妹、小林貴子個展「風景の境目」

いよいよ本日10月1日より6日まで、愛知県豊橋市のギャラリーNAKAで、妹小林貴子の個展「風景の境目」 を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。 http://www006.upp.so-net.ne.jp/soshite/index.html