現象の奥へ

映画レビュー

ウディ・アレン脚本・監督『サンセバスチャンへ、ようこそ』

ウディ・アレン脚本・監督『サンセバスチャンへ、ようこそ』(2020年作品、2024年1月19日日本公開)──高齢者の高齢者のための後期高齢者による作品(★★★)正直、寝落ち数回(笑)。筋書きも「思想」もすでにわかっている。私にとって問題は、どれだけ魅力的…

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(ポール・キング監督)(★★★★★)

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(ポール・キング監督)(★★★★★)ティモシー・シャラメが出るなら、三度のご飯を抜いても駆けつけるぞ〜ってなもんで本当は、『ナポレオン』より先に見るはずだったが、時間の都合と、『ナポレオン』は早く終わりそ…

『ナポレオン』(リドリー・スコット監督)(★)

『ナポレオン』(リドリー・スコット監督)(★←星付けなど今更意味ないが、映画にはこの評価が似合う)映画は役者できまる。私は役者に関心がある。ゆえに、いくらヒットしようと賞をとろうと、アニメには関心がない。ホアキン・フェニックスとリドリー・ス…

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート監督)──映画の時代が終わったあとの新生映画(★★★★★)

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート監督)──映画の時代が終わったあとの新生映画(★★★★★) すでに映画の時代は終わり、もう感動とか物語とか、かっこいい美形のヒーロー、ヒロインで、観客…

スピルバーグ監督『フェイブルマンズ』

『フェイブルマンズ』(スティーブン・スピルバーグ監督、THE FABELMANS)──映画の時代の終わりを察知した作りになっている。 映画館で映画を観るという時代は、いまはなくなってないが、すでに終わっている。新型コロナに端を発する、そして戦争や事件や政…

【昔のレビューをもう一度】ゴダールの『アルファヴィル』(1965年)

ゴダールの『アルファヴィル』(1965年) 『ALPHAVILLE』(Jean-Luc Godard, 1965) 「続編」の、「新ドイツ零年」の方が有名だと思われる、もとになったフィルムだが、もともとハードボイルドスターの、エディー・コンスタンスが、地球外の星のアルファヴィ…

【【昔のレビューをもう一度】「クィーン」

【昔のレビューをもう一度】2007年4月14日公開『クィーン』THE QUEEN104分2007年4月14日公開「Dignity(気品)」 本作を観ると、「立憲君主制」とは、いかなることか、よくわかる。その点、わが国も、同政体をとっているのだが、果たして、ほんとうの立憲君…

『L.A.コールドケース』──やっとアメリカも「地味」の意味を知るに至った(★★★★★)

『L.A.コールドケース』(ブラッド・ファーマン監督、2018年、原題『CITY OF LIES』) ジョニー・デップは存在自体が派手で、どこにいても、どんな役をやっても目立つ。4年前に完成した映画だが、公開は今年となっている。動きも、展開も地味であり、解決の…

『キャメラを止めるな!』──勘違い!(★)

『キャメラを止めるな!』(ミシェル・アザナヴィシウス監督、2022年、原題COUPEZ !/FINAL CUT) メイク先のもとになった映画は、確かに「予想に反して」大ヒットしたが、それは、観客が、素人映画だとたかをくくって見始めて、だんだん凄い展開になっていっ…

『マーベラス』──マイケル・キートンを"恋人役"に持ってきたところがこの映画の新しさ(★★★★★)

『マーベラス』(マーティン・キャンベル監督、2022年、原題『The Protege』) 「恋人」たって、かなりひねくってある恋人だが(笑)。 原題は、『The Protege』(邦題は「マーベラス」(marvelous)で「すばらしい」という意味だが、むしろ内容から遠くなっ…

『ベイビー・ブローカー』──自己模倣の下降スパイラル(★)

『ベイビー・ブローカー』(是枝裕和監督、2022年) どんな世界でも一度話題になり名前が出てしまうと、その後、その人のキャリアの終わりまで、誰かは見て、なにか言ってくれ、なんらかの賞までもらえる。しかし、真の観客は失望し続ける。それを体現してい…

『英雄の証明』──差異を描き出すのも映画の手柄(★★★★★)

『英雄の証明』(アスガー・ファルディ監督、2021年、原題『GHAHREMAN/A HERO』 イランは映画大国で、キアロスタミをはじめ、作風は洗練されている。生活は欧米化されていて、社会もわりあい開かれている。しかし、細部で、やはり民主主義先進国の生活、社会…

『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』───政府筋も非政府系ボディガードにおまかせ!の時代(笑)(★★★★★)

『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』(パトリック・ヒューズ監督、2020年、原題『HITMAN'S WIFE'S BODYGUARD』 前作の『ヒットマンズ・ボディガード』は観ていない。が、根本の思想といっては大げさだが、アイディアは同じものだろう。つまり、凄腕の…

『ガンパウダー・ミルクシェイク』──この映画に比べれば、ウェス・アンダーソンもダサい!(笑)(★★★★★)

『ガンパウダー・ミルクシェイク』(ナヴォット・パプシャド監督、2021年、原題『GUNPOWDER MILKSHAKE』) 「タランティーノ絶賛!」で、とるものもとりあえず観に行ったが、ひゃ〜面白さ満載!女の、女たちのハードボイルドだが、先のハリウッド作の、「3…

『ナイル殺人事件』──なんら新しいものなし+二流以下俳優たち(★)

『ナイル殺人事件』(ケネス・ブラナー監督、2022年、原題『DEATH ON THE NILE』 前作の『オリエント急行殺人事件』は、まだ見られたが、今回「調子に乗って」(?)作ったのか、まったく面白味なし、新鮮味なし、おまけに魅力的な俳優ゼロ。あのアーミー・…

『ウエスト・サイド・ストーリー』──「こいつ映画がわかってやがる」(★★★★★)

『ウエスト・サイド・ストーリー』(スティーブン・スピルバーグ監督、2022年、原題『WEST SIDE STORY』) 「こいつ映画がわかってやがる」。NYで初めて、不本意ながら、スピルバーグのデビュー作『激突』を見させられた、淀川長治の台詞である。スピルバー…

『ドライブ・マイ・カー』──どこが面白いのかわからない(★)

『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督、2021年、英語題名『DRIVE MY CAR』) (昨年観て、Yahoo!映画にレビューを投稿したところ、削除されていた。理由を推測すると、村上春樹が作中よく使う事柄で本作でも使われていた(くせに)、「フェラチオ」という…

『355』──男がイマイチ(★★★★)

『355』(サイモン・キンバーグ監督、2022年、原題『THE 355』) アクションとしては悪くないが、「女スパイ」(「なりゆきスパイ」のコロンビア人のセラピスト、ペネロペ・クルスも含めて)たちが全員、政府筋のスパイであるところが、やや時代からズレ…

『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』──映画はなんでもできる!(★★★★★)

『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(ウェス・アンダーソン監督、 2021年、原題『THE FRENCH DISPATCH/THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY, KANSAS EVENING SUN 』) 世界でいちばん新しい映画といえば、本作であろ…

『スティルウォーター』──後味が悪い(★★★)

『スティルウォーター』(トム・マッカーシー監督、2021年、原題『STILLWATER』) マット・デイモンは見ていて安心する演技をする役者なので、映画を選ぶ際の基準になる。本作もそういう期待で見たが、デイモンの演技は手堅いものであったが、脚本、演出が冗…

『クライ・マッチョ』──まぎれもない現役感!(★★★★★)

『クライ・マッチョ』(クリント・イーストウッド監督、2021年、原題『CRY MACHO 』) 本来老人は生きてきただけの知恵があり、それに自信を持つべきだと、小林秀雄は言っている。いまは、若者を持ち上げ、老人は「ジジイ」と蔑まれ、失われた体力と知力で、…

『キングスマン:ファースト・エージェント』──税金使ったスパイの時代はオシマイ(笑)(★★★★★)

『キングスマン:ファースト・エージェント』(マシュー・ヴォーン監督、2020年、原題『THE KING'S MAN 』) 公費を使いまくって、テキトーにかっこつけてる、「殺しのライセンス」を持つスパイの時代は、完全に終わって(なにしろ本人死んでるし、子ど…

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』──ハンパな公害モノではない(★★★★★)

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』(トッド・ヘインズ監督、 2019年、原題『DARK WATERS 』) 本作は、単純な公害告発映画ではない。公害被害者の写真を撮って、世界に発表、訴訟、政府による断罪、で、終わりではない。企業が垂れ流す毒にもいろ…

『ワン・プラス・ワン 』──革命的な、あまりに革命的な!(★★★★★)

『ワン・プラス・ワン』(ジャン=リュック・ゴダール監督、 1968年、原題『ONE PLUS ONE/SYMPATHY FOR THE DEVIL 』 「Yahoo!映画の解説/ストーンズの録音風景に、革命をテーマにした記録フィルムをかぶせたドキュメンタリー。」 ↑まったく違う(笑)。ドキ…

『ドント・ルック・アップ』──地球滅亡は彗星衝突ではなくネット社会のせい?(★★★★★)

『ドント・ルック・アップ』(アダム・マッケイ監督、 2021年、原題『DON'T LOOK UP』) 確かに「物語」には新しさはないかもしれない。「地球最後の日」という物語である。しかし、この「プラネット」には、ネットがあり、IT企業があり、拝金主義があり、で…

『カオス・ウォーキング』──『未知との遭遇』へのオマージュ(★★★★★)

『カオス・ウォーキング』(ダグ・リーマン監督、2021年、原題『CHAOS WALKING』 まず、『未知との遭遇』を観てないと、この映画の最高に美しい場面を見逃すし、見ても意味がわからない(笑)。ハンパな「映画通」のジジイには、理解できねーだろーなー(爆…

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』──川端康成なら400字詰め50枚でしあげる(★★)

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(ジェーン・カンピオン監督、 2021年、原題『THE POWER OF THE DOG』 実際、この映画は、本来短編の味わいの作品である。章立てされているので、多少なりともすっきり見えるが。ミスディレクションの趣もあり、「完全犯罪」な…

『モスル~あるSWAT部隊の戦い~』──ゲームチェンジ (★★★★★)

『モスル~あるSWAT部隊の戦い~』(マシュー・マイケル・カーナハン監督、2019年、原題『MOSUL』) 本作は、リドリー・スコットが20年前に撮った、『ブラックフォーク・ダウン』(2001年)を思わせる。ほとんどがれきの戦場だけが舞台であり、出てくるのは…

『フォーリング 50年間の想い出』──ヴィゴ・モーテンセンショーだが……(★★)

『フォーリング 50年間の思い出』(ヴィゴ・モーテンセン監督、 2020年、原題『 FALLING 』 ヴィゴ・モーテンセンショーである。自分と実の父との関係とも重なっているとか。60過ぎているモーテンセンは相変わらす美しく、今はやりの、LGBTQや「多様性…

『モーリタニアン 黒塗りの記録』──老いた女のリリシズム(★★★★)

『モーリタニアン 黒塗りの記録』(ケヴィン・マクドナルド監督、2021年、原題『THE MAURITANIAN』 今年は9.11二十周年にあたり、それなりの行事はあったが、すでに世界は、「ちがうもの」になっていた。いまだに、「真相」を追いかけているのは、FBI(連邦…