現象の奥へ

ウディ・アレン脚本・監督『サンセバスチャンへ、ようこそ』

ウディ・アレン脚本・監督『サンセバスチャンへ、ようこそ』(2020年作品、2024年1月19日日本公開)──高齢者の高齢者のための後期高齢者による作品(★★★)

正直、寝落ち数回(笑)。筋書きも「思想」もすでにわかっている。私にとって問題は、どれだけ魅力的な俳優が出るか、であるが、残念ながら、ウディ・アレンの分身とおもわれる、モート役のウォーレス・ショーンが「当時」76歳、妻役のジーナ・ガーション(かつてはハードボイルドの女優であった)が57歳のアラカン、その「若き」愛人、フランス人の映画監督のガレル36歳、モートが恋する女医役スペイン女優44歳……とくれば、みんなそれなり若く見えるし、ほんとうの若者はどこにもいない。かてて加えて、アレン監督自身は、84歳とあらば、よーやるよ、を通り越して、もう、なんか年寄りの妄想としか思えない。かてて加えてアメリカ人特有の、セックスへの愛(笑)。いくつになっても変わらんなー。ときおり、高齢者にサービスの、古きよき名作のコラージュ。ベルイマンフェリーニゴダール、「ローズバッド」の、名前ど忘れ監督とか……。私などは、若い頃はそれほど映画を観ていなかったので、「あーなつかしー」と感激することができない。知識で、なんとなくどの作品かはわかるが。その点、『ニューヨーク・イン・レイニーデイ』は、映画を観る喜びが感じられたが。(懲りずに)次回作もあるそうだから、これで終わってしまうアレンではないが。この映画の舞台のサンセバスチャン、どうも既視感があると思ったら、八年ほど前に、近くまで行ってました(笑)。主役の、ウォーレス・ショーンは、アレンの分身ながら、アレンよりも不細工と思ったら、ハーバードその他、いくつも名門大学を出ているモノホンインテリでした。モテたかったら、ジジイよ、知性を磨け!(まあ、若い頃からでないと無理だけど。小林秀雄は、だいたいその人の知的活動は、三十代で完成すると言っている)