現象の奥へ

Entries from 2019-10-01 to 1 month

【昔のレビューをもう一度】『キャロル 』──いま、女が心地よい(★★★★★)

『キャロル』(トッド・ヘインズ監督、2015年、原題『CAROL』)2016年2月17日 21時52分 50年代のアメリカの街や衣装、小道具、二人の女優の美しさにばかり目を奪われがちだが、この映画、演出が相当行き届いている。だいたい、男がろくでもないやつというか…

【詩】「雨が空から降れば」

「雨が空から降れば」 むかし「雨が空から降れば思い出は地面に染みこむ」という歌があった。ペーター・ハントケがまだ劇作家で、『被後見人が後見人になりたがる』という台詞のない戯曲を発表していた時代その題名は、シェークスピアからの引用で早稲田小劇…

【昔のレビューをもう一度】『T2 トレインスポッティング 』──懲りない面々が放つ脱青春映画……2!(★★★★★)

『T2 トレインスポッティング』(ダニー・ボイル監督、2017年、原題『T2 TRAINSPOTTING』 2017年4月26日 3時10分 吉田健一によれば、ヨーロッパ人にとってのヨーロッパとは、故郷のなじんだ風景以外のなにものでもないそうで、それは当然、それぞれに違う。…

『イエスタデイ 』──今年度ベスト3内確実(★★★★★)

『イエスタデイ』(ダニー・ボイル監督、2019年、原題『YESTERDAY』 主人公に魅力を感じなかったというレビュアーがいた。それは、有色人種であり、あまり顔を知られてない俳優だったから? ダサい有色人種の主人公は、『スラムドッグ$ミリオネア』で、デブ…

【昔のレビューをもう一度】『ブラック・スキャンダル』──洗練された21世紀の犯罪(暴露)映画(★★★★★)

『ブラック・スキャンダル』(スコット・クーパー監督、 2015年、原題『BLACK MASS』)2016年2月1日 7時43分 共感できる人物はひとりも出ない。70年代、FBI最大のスキャンダルとされる、アイルランド・マフィアがからんだ「実話」であるが、いやな感じは少し…

文学フリマのお知らせ

10月20日「文学フリマ」11:00a.m〜4:00p.m@福岡大丸(エルガーラ8F)。詩集「杉村」から「ねじ」まで、1500円均一。来てね。ご希望の方には「附録」アリ(笑)。

『真実 』──フランスに樹木希林はいない(★)

『真実』(是枝裕和監督、2019年、原題『LA VERITE/THE TRUTH』 パリの閑静な地区の広い庭のある一軒家に、往年の大女優の自伝出版を祝うため、ニューヨークに住む娘一家が集まって、その娘の父親で、昔の夫なども登場、忠実な秘書や、今の男(当然ジジイ)…

【詩】「アメリカの女」

「アメリカの女」 ジェーン・フォンダではないバーブラ・ストライサンドでもないミシェル・オバマでもないユフィーミア。ケイト・ウィンスレットのような美人ではない、痩せぎすの金持ちの娘。修道院の学校生活で貴族との結婚を密かに夢見る。べつに美男を望…

【昔のレビューをもう一度】『グランド・ブダペスト・ホテル』── ポスト・ポスト・モダン的(★★★★★)

『グランド・ブダペスト・ホテル』(ウェス・アンダーソン監督、2013年、原題『THE GRAND BUDAPEST HOTEL』 2014年6月9日 16時15分 ストーリーはあるにはあるが、ウェス・アンダーソンが本作で描きたかったのは、「一覧できるヨーロッパ的なるもの」と、「そ…

【昔のレビューをもう一度】『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 』──大竹しのぶ+市村正親の方がはるかによい(★★)

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 』(ティム・バートン監督、2007年、原題『SWEENEY TODD: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET』) 2008年1月23日 2時35分 本作は、もともとあるミュージカルの「古典」を映画化したもので、復讐劇も人肉パイ…

【詩】「詩法」

「詩法」 そして非コードDNAの叛乱、夢見ればマラルメの骰子より悲し父よ母よ虚無よ遠くオリンポスで会議する神々よ韻は定義されクロンネ韻アンペリエール韻バトレ韻さかしまに吊られる巫女よ、航海の無事を祈れ!

マイケル・ムーア曰く「『ジョーカー』を見逃すな!」

マイケル・ムーア曰く、「『ジョーカー』は、今のアメリカの状況を如実に表している。この映画を観ないことの方がコワイ」と書いている。そして、彼は、鏡の中の私たちだとも。ほとんど私と同意見だと思う。 https://www.facebook.com/mmflint/posts/1015627…

『ジョーカー 』──ジョーカーはまたあなた自身(★★★★★)

『ジョーカー』( トッド・フィリップス監督、2019年、原題『JOKER』) 紋切り型のアクション映画などは、悪役は無名にやらせ、やっつけてオシマイということでメデタシ、メデタシということになる。007シリーズなどは、そのあたりをよく考えていて、ボンド…

【詩】「あるいは猿蓑」

「あるいは猿蓑」 斜めに見上げれば音綴が降るヴェルレーヌのけれど意味までは至らずこの深みはどこから来るのか悲しみの破片すらはせをには許されず乞食のように何かを乞う天使はまだ眠っている幻住庵に脚をそろえ定型を作れば許される/さまよう思い出すこ…