現象の奥へ

【詩】「ヴァレリー、あるいは地中海」

「ヴァレリー、あるいは地中海」「詩がそうして我々に語り掛けて、何かを我々に伝えるのは、一般に言葉を使う時の例に洩れない。それは今日でもそうであって、例えばディラン・トオマスがロンドンの空襲で焼け死んだ女の子を悼んで作った詩は、事実、その死…

アドルノ『プリズメン──文化批判と社会』

テオドール・W・アドルノ『プリズメン─文化批判と社会』(渡辺祐邦・三原弟平訳、ちくま学芸文庫)有名な、「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」という文章は、本書の「文化批判と社会」というエッセイのなかに含まれている。独立したアフォ…

『ブルターニュの光と風』展@豊橋市美術館

『ブルターニュの光と風』展@豊橋市美術館おもに19世紀のブルターニュ出身の画家たちの作品を集めた。なかの「有名人」は、ゴーギャン。タヒチに経つ前に一時滞在していた。ブルターニュは、地味ながら、それなりの画家たちのメッカだったようだ。荒々しい…

【色鉛筆画】「枯れていく白木蓮」

【色鉛筆画】「枯れていく白木蓮」

けふのNY TIMES WEEKLY, 2024. 3.10

けふのNY TIMES WEEKLY, Sunday March 10,2024(朝日新聞がデータをプリントして配達しているので、ほぼリアルタイム)【一面TOP】@ボゴタ、コロンビア。アニー・コレアル記者。「コロンビアは移民危機に直面している」「数千人のアフリカ人が、アメリカ…

アドルノ『文学ノート』

TH.W.アドルノ『文学ノート』(三光長治他訳、イザラ書房)「おのれ自身を理解していない思想だけが、本物である」「アウシュヴィッツのあとで、詩を書くのは野蛮である」 『ミニマ・モラリア』に見られる有名なフレーズである。小林秀雄は、柳田国男のよう…

ユルゲン・ハーバーマス『事実性と妥当性』

ユルゲン・ハーバーマス『事実性と妥当性』(河上倫逸・耳野健二訳、未来社刊)ハーバーマスの主著の第三期に位置する本書をなぜか亡霊の中から呼び戻し、このネット社会の混沌というより、さらにエントロピー化の進んだ世界で、どのように正しく思考すれば…

【詩】「瞳をとじて」

「瞳をとじて」ある女流作家が、Xで、自分の母の死を、「母の逝去」と書いていた。逝去とは、身分の高い人についていう言葉だ。ま、それはいいとして……ギー藤田なる映画監督とSNSで知り合った。冗談がおもしろく、どこか共通の趣味もあり、親しくなった…

【詩】「愛皇帝暗殺」

「始皇帝暗殺」風蕭蕭兮易水寒壮士一去兮不復還葱白く洗ひたてたる寒さ哉(芭蕉)易水に根深流るる寒さかな(蕪村)おのれを鼓舞するため、石に刻まれた言葉は、詩となり、日本まで来た。海は遠く、葡萄酒色。彼らはホメロスが見ていた、その色を知らなかっ…

【詩】「地獄で待ってろクソじじい!」

「地獄で待ってろクソじじい!」 某じじいの詩人が、じじい皆殺しの詩を考えて、 武器なしで言葉だけで殺したいと。 氏は、「武器」のことを、ヤクザことばの「チャカ」を「茶菓」と表現していた。なにか、ヤクザのように残虐でありたいけれど、そこまで下品…

ビクトル・エリセ『瞳をとじて』

ビクトル・エリセ『瞳をとじて』──記憶とは動き続けるもの92年の『マルメロの陽光』で、ビクトル・エリセは、脚本を作らず、最低限の設定で、画家がマルメロの木と向き合い、描いていく様子を撮った。このとき、画家との了解以外、プロデューサーも決まって…

土井善晴『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)

土井善晴『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)「料理して食べるという営みにあるのは、栄養の摂取、食の学び(マナー・知識)、空腹を満たす満足、おいしさの楽しみ、人間関係を深めるという目的だけではありません。人生にかかわるあらゆるものの起源…

【詩】「高村光太郎」

「高村光太郎」ふつう、月が出ている、とか、星が出ている、とか、書く。しかし、高村光太郎は、「火星が出ている」と書いていた。そんな詩を、料理研究家の土井善晴氏のエッセイ集、『味つけはせんでええんです』に引用してあった。そういや、中学生の頃、…

【詩】「紫式部日記」

「紫式部日記」まず大きな疑問は、古代に、自我が、存在したかどうか。平民は、穴ぐらのようなところに住んでいた時代である。「紫式部日記」なる薄い書物は、一条天皇中宮、彰子が出産のために実家である、土御門殿に帰り、安産を祈願する僧たちの読経の声…

母山下みゆきの水彩画、「きんかん」

母山下みゆきの水彩画、きんかん。

【詩】「ダンテと海ザリガニ」

「ダンテと海ザリガニ」って短編がベケットにあった。ベラックァが風邪で寝ていて、ベラックァはイタリア語を習っていて、ダンテのところがあって、それで……。海ザリガニをゆでていたんだ。英語圏の詩人たちにとって、ダンテは崖のようにそびえている。「ダ…

【詩】「さらば涙と言おう2」(阿久悠)

「さらば涙と言おう2」(阿久悠)さよならは誰に言う?さよならは哀しみに。雨の降る日を待って、さらば涙、と言おう。と、ぶっきらぼうに歌っていた学生服の森田健作は、のち、千葉県知事になった。それから、さらば、県知事職と言った。森田はいったい、何…

【思い出す映画】『告発の行方』

【思い出す映画】ジョディー・フォスター主演『告発の行方』ケリー・マクギリスの弁護士が、ジョディー・フォスターを擁護して戦う。ジョディの役は、もともと身持ちのよくない不良の女。ジュークボックスのある店にたむろし、曲をかけては、セクシーなダン…

【記憶のなかの詩句】

【記憶のなかの詩句】「夜はいまだ、青梅の未熟さなので」(大岡信) 大岡信の詩のなかの一行であるが、演出家鈴木忠志率いる、劇団「スコット」富山県利賀村公演での、ギリシャ悲劇の「トロイアの女」か「バッコスの信女」に出てきた。看板女優、白石加代子…

【詩】「ドシウエフスキーの『永遠の良人』」

ドストエフスキーの「永遠の良人」 「一は二十年の漁色生活による、他は二十年の結婚生活による、数々の苦痛が念入りに育て上げた、爛熟した人間の心の平常な姿だ。一歩進めてと言ってもいゝ。人間四十年もこの世に暮らして、この程度の心の無気味さ持てなけ…

【詩】「ハムレット」

「ハムレット」「ハムレット」という小説をラフォルグが書いている。そのなかに、意地悪そうな目つきをした白鳥たちという表現があるが言い得て妙だ。ハムレットといえば、すぐに思い出すのは、文学座の江守徹である。アトリエの公演で「ハムレットや調子は…

母山下みゆきの水彩画「シクラメン」

母山下みゆきの水彩画、シクラメン。 「ショーヘイくんの英語、私にも少しはわかるよ」(みゆき)。

ミス日本

みなさん、「ミス日本」です! 今どきミスコンなんてテレビのニュースでもやらない。流したところもあるかもしれないけど。1月22日にそのコンテストがあったとさ。あらわれた、「ミス日本」、カロリーヌ・シノさん、御年26しゃい。ウクライナから、5しゃいの…

母山下みゆきの水彩画「アメリカの原住民」(本人の言)

母山下みゆきの水彩画「アメリカの原住民」(本人の言)

【詩】「上意討ち3」

「上意討ち3」右は高輪泉岳寺 四十七士の墓どころ ひとり、赤穂への報告のため逃がしたから、実際は、四十六士。戒名にはすべて「刃」の文字が刻まれている。赤穂城城主、浅野内匠頭長矩は、殿中で刃を抜いたため、捕らえられ、駕籠に乗せられ罪人として裏門…

【詩】「上意討ち2」

「上意討ち2」以前、同じ題材について書いた。この短編の書きようが、なんともアヴァンギャルドだったのが印象に残った。それで先日、ドストエフスキーの『永遠の良人』の二人の男の邂逅場面を心に描きながら詩に書いた。二人は背負い切れないものを背負って…

【詩】「上意討ち」

「上意討ち」自らの恨みではない。上から言われてある男を追う。池波正太郎は、似たような題名の短編をいくつか書いている。時の、砂嵐に巻かれ、はたして、十数年前やりすごした相手に出会う。ふたたび、やりすごしてござる。時代劇は、普通のエッセイのよ…

ウディ・アレン脚本・監督『サンセバスチャンへ、ようこそ』

ウディ・アレン脚本・監督『サンセバスチャンへ、ようこそ』(2020年作品、2024年1月19日日本公開)──高齢者の高齢者のための後期高齢者による作品(★★★)正直、寝落ち数回(笑)。筋書きも「思想」もすでにわかっている。私にとって問題は、どれだけ魅力的…

【詩】「巷に雨の降るごとく」

「巷に雨の降るごとく」巷に雨の降るごとくわが心にも涙降る涙さしぐみ帰りきぬモンスリ公園のなかだった鐘は鳴れ……ええと……いずれの御ときだったのかしら?ひろひと、天皇のみよだった。いとやんごとなききわにはあらねどきわめてときめきたもうありけりは…

牡蠣のソテー

けふの晩ご飯。牡蠣のソテーをフルーツサラダ(ミカン、キーウィ)で食べる(有元葉子先生レシピ応用)。それと、ラーメン、どんな取り合わせや?(笑)、オーストラリアのオーガニックワイン、ソーヴィニオン・ブラン(キリッと辛口)。