現象の奥へ

たまたまの吉増剛造詩集

「たまたまの吉増剛造詩集」 「吉増剛造詩集」全五巻のうち、たまたま本棚にあった二巻、『黄金詩編』(1964-1969)と、『わが悪魔払い』(1972-1973)。この二冊は、できが全然ちがう。あとの方がひどすぎる。ことほどさように、この詩人は劣化してきた? …

「別れ、あるいはカルヴィーノの黄昏」

「別れ、あるいはカルヴィーノの黄昏」 「黄昏が別れをためらわせた」とボルヘスは書く。 遠く近い砂漠の、 Duneと呼ばれたその星の天上では、 イタロ・カルヴィーノが月までの距離を測っていた。 ボルヘスが測っていたのは森の昏さで、 今宵、いろいろな言…

「見世物」

「見世物」三河一宮の砥鹿神社のお祭りにはいつも見世物小屋がたって、ものものしい看板が観客を驚きの国へと連れて行く。大学病院の白衣を着た医師と看護婦が驚きの表情をしている絵。一つ目の赤ん坊。その異形にどんな論理も法律も摂理も持ち込まれない。…

【昔のレビューをもう一度】ゴダールの『アルファヴィル』(1965年)

ゴダールの『アルファヴィル』(1965年) 『ALPHAVILLE』(Jean-Luc Godard, 1965) 「続編」の、「新ドイツ零年」の方が有名だと思われる、もとになったフィルムだが、もともとハードボイルドスターの、エディー・コンスタンスが、地球外の星のアルファヴィ…

R.I.P Godard

『ゴダールがキャメラを向ければレマン湖のほとりの平和な光景はあらゆる物語の舞台装置へと変容してしまう。──『ゴダールの決別』(蓮實重彥『映画狂人日記』P150) 原題『Hélas Pour Moi!』 日本語で言えば、 ああーなんてこった! みたいなものか。まだ、…

倫敦塔

「倫敦塔」漱石のエッセイ、『倫敦塔』を読み、そこが拷問室であったことを知り、見にいった(地下鉄(チューブ)の端っこ)が、すでに入室可能時間は終わり、なにかの祝典で、パディントンの明かりが取り巻いていた。2013年11月のことだった。私にとって、…

【【昔のレビューをもう一度】「クィーン」

【昔のレビューをもう一度】2007年4月14日公開『クィーン』THE QUEEN104分2007年4月14日公開「Dignity(気品)」 本作を観ると、「立憲君主制」とは、いかなることか、よくわかる。その点、わが国も、同政体をとっているのだが、果たして、ほんとうの立憲君…

【詩】「船旅」

「船旅」「海は無数の剣であり、満ち足りた貧困である」とボルヘスが書いたとき、アシェンバハは船からすれ違うべつの船を見ていた。豪華客船であり、甲板で船客たちが彼に向かって手を振っていた。なかでも、派手な作りの男、顔を白塗りにして口紅を塗り、…

【誰でも知っているが、ネットで恥をかいているアナタのためのカブキのレキシ】

【誰でも知っているが、ネットで恥をかいているアナタのためのカブキのレキシ】 歌舞伎の芸は、親が名優で、家が名門でなければ、「奥義」のようなものは伝授されず、役も、いい役が取れない。三歳ぐらいから、「花伝書」のような、訓練をしなければならい。…

「源氏物語」

「源氏物語」この時代、紙は貴重なり。ゆえにパトロンがいる。パトロンは、「教え子」中宮彰子の父、藤原道長なり。全巻中、雲隠という章は題名のみ。はて。雲隠の章は紛失す。宣長だったか。それ以前の章は後より付け足された章なり。ゆへに、雲隠の章から…

「トーマス・ベルンハルト、絶望だけが人生だ」

「トーマス・ベルンハルト、絶望だけが人生だ」さて、絶望の描き方は、誰に教わる?単純化してもまだしたりないキリスト教徒サミュエル・ベケット?豪華絢爛なキリスト教徒ダンテ・アリギエーリ?(そう。ダンテはファーストネームなんだ)このオーストリア…

菅直人氏が今年二度目のブログ更新

【ブログ2022/8/31】 菅直人氏が、今年二度目のブログ更新。菅氏は、安倍に最高に妨害された人々の一人である。長期に渡り、継続的に反原発活動をしている「アクティヴィスト」である。 https://ameblo.jp/n-kan-blog/entry-12761709964.html

「愚かな薔薇」

「愚かな薔薇」夢の奥で待ち構えている夢。そいつに、つかまるな!あなたから昼を洗い流す、暗い水の底に消えろ!無が与えてくれる死を憩わず、淫らな驚異を笑い尽くせ!さようならデミトーリアス、誰だったか、もう忘れたけど。王妃が葡萄酒色の裳裾で王の…

「貫之」

「貫之」つらゆきといふ名が風になつたりもみぢになつたり、ひゆになつたり、をとば山の梢になつたり、して、時間としてわたしの内部にとけるとき、じさつしゃがやってきて、じつとみつめてくれるなまえはべるんはるとおーすとりあのだいしじんなり。しかし…

「花」

「花」幼いころ、私は恐れた。真夜中に花は私をじっと見つめているのではないかと。あるいは、走り回って、げらげら笑っているのではないか。それでずっと起きていて、ある真夜中、花の中をのぞき込んだ。案の定、そのなかからじっとこちらを見ている顔があ…

「明日は帰ろう本能寺」

「明日は帰ろう本能寺」フロイスの日本史によれば、焼け跡から白い骨が見つかったそうである。ときはさつきのまさに、名残の句が用意されようとしていたとき、まさに、土岐(とき)一族がその時代、法華経の寺ではしばしば、処刑が行われたと書かれている。…

「秋」

「秋」日本では、「詩」といえば、明治時代まで、漢詩のことであった。詩人の方々がよく口にする「現代詩」というのは、出版社が創ったものである。そんな形式、ジャンルが通用するのは日本だけである。今信じられている「詩」は「近代詩」のことで、イギリ…

舗道

「舗道」思い出せないボードレールの一行があり、朗読するミシェル・ピコリのしゃがれた声があり、彼が通り過ぎていく舗道がある。その下にはどんな革命が眠っていたのか。ピコリの声はすでにすべてを諦めているような。二度と訪れぬ街があり、その街には思…

【詩】「驟雨」

「驟雨」出会った時、すでに背負いきれないほどの苦悩を背負っていたふたり、と小林秀雄は書く。それは、ドストエフスキーの『永遠の良人』の登場人物についてであるが、これが、トルストイなら、もっと長々と事情を書くだろうと。潔い構成。いかにも「現代…

「サミュエル・ベケットが書くプルースト論」

「サミュエル・ベケットが書くプルースト論」プルーストの『失われた時を求めては』は、モンクリーフの英訳で、4000ページ、150万語から成る。これをベケットは仏語と英語で、数回読み通し、小冊子で100ページ足らずの評論を書いた。 方程式を探るために、「…

『L.A.コールドケース』──やっとアメリカも「地味」の意味を知るに至った(★★★★★)

『L.A.コールドケース』(ブラッド・ファーマン監督、2018年、原題『CITY OF LIES』) ジョニー・デップは存在自体が派手で、どこにいても、どんな役をやっても目立つ。4年前に完成した映画だが、公開は今年となっている。動きも、展開も地味であり、解決の…

3種のひまわり@青山フラワーマーケット

わん太のための3種のひまわり@青山フラワーマーケット

「台湾」

「台湾」台湾とはなにか?それは、埴谷雄高の幼少時の朝から泳いだ森林に囲まれた谷川を持つ、地球のどこかである。観光的な視点も政治的な視点も、ない。無垢な原風景を蔵する「場所」。そこには、戦いも殺戮もなく、なにもない。高橋和巳を鎮魂する埴谷の…

「夏のテクスト」

「夏のテクスト」宇宙は偶然のなかから生まれたなら、あらゆるテクストはテクストクリティークを、たとえ無意識でも、含んでいなければならず、古今集のなかに柿本人麿の歌が七首混入されていることに留意しなければならず、わがやどの池の藤波咲きにけり山…

「中原中也」

「中原中也」NHKの朝ドラで、差別的な母親が息子の結婚を反対している。相手が大学を出ていない、家柄が悪い……とかなんとか、ありきたりのいちゃもんをつけて。その母、鈴木保奈美が演じているが、中原中也を愛読している。一方息子も、心優しき恋人に諭…

『キャメラを止めるな!』──勘違い!(★)

『キャメラを止めるな!』(ミシェル・アザナヴィシウス監督、2022年、原題COUPEZ !/FINAL CUT) メイク先のもとになった映画は、確かに「予想に反して」大ヒットしたが、それは、観客が、素人映画だとたかをくくって見始めて、だんだん凄い展開になっていっ…

「アフロディーテーを待ちながら」

「アフロディーテーを待ちながら」百億光年の光のなかから、すべての愛、のようなものを否定して、帰って来いアフロディーテー、最愛の女。その都市にはすでに名前はなく、男の名前もついぞおまえの記憶から消えた。ある星のエネルギーのように、まだ解明さ…

「固有名」

「固有名」 「人物の名を語ること、それは顔を表現することである。ありとあらゆる名詞や常套句の只中にあって、固有名は意味の解体に抵抗し、私たちの発語を支えてくれるのではないだろうか」(エマニュエル・レヴィナス)そこで積み重なる日々は習慣という…

「ジアコモ・レオパルディがどんな詩人か、『春の雪』のなかでフランス人に知らしめたのは、三島由紀夫である」

「ジアコモ・レオパルディがどんな詩人か、『春の雪』のなかでフランス人に知らしめたのは、三島由紀夫である」Le monde n'est que fange.「そして世界は泥である」と、ベケットは、プルースト論のエピグラムとして、レオパルデイの詩の一行を掲げた。この、…

「ロラン・バルトは舟木一夫のことをいい男だと思っている」

「ロラン・バルトは舟木一夫のことをいい男だと思っている」日本をopaque(不透明な)の国と規定するバルト。ちょうど朝霧に包まれた水辺をゆったりと舟がゆくように、バルトの視線は日本国を流れていく。眼にとまったのは、武将姿のいい男。Que beau homme …