現象の奥へ

【詩】「パリにて、風の吹きすさぶ秋の夜」

「パリにて、風の吹きすさぶ秋の夜」At Paris, just after dark one gusty evening in the autumn of___と書くと、あまりに漠然としている。具体的にいえば、フォブール・サンジェルマンデュノ通り三十三番地四階のおれの、小さな書庫兼書斎で、おれは日本人…

【詩】「性」

「性」性というのは、当然生殖のことである。子孫を増やすため、生殖する。しかし、人間は精神というものを持ってしまった。昆虫のように、深海魚のように、「無私」でできない。人類最大の不幸。どんな人間にも、ロマン=快感がいる。その昔、小倉駅前に「…

【詩】「父の日」

「父の日」6月16日は、ユリシーズの日ではなく、父の日だった。どうせ母の日のついでに商業主義が作った記念日だろう。母の日といえば、カーネーションを贈るのが定番となっている。父の日は、食い物だとか、お酒だとか、洋服だとかいろいろ。母が、「お…

【Poème】

【poème】Tra un fiore colto e l'altro donatoI'inesprimibile nulla(Giuseppe Ungaretti "Eterno")elle viennentautres et pareilesavec chacune c'est autre et c'est pareilavec chacune l'absence d'amour est autreavec chacune l'absence d'amour es…

【詩】「花論」

「花論」花々が咲く異なっていて同じであるそれぞれ 別の花であり同じ花であるそれぞれ 匂いは異なっているそれぞれ 匂いは同じだベケットを真似たこの詩に欠けている言葉を足して

Frnçoise Hardy 死去

Françoise Hardy 死去 "Tirez pas sur l'ambulance !Je suis déjà à genoux."(「救急車を撃たないで! あたしはもう跪いてるんだから」) ……そんな歌詞が口をついて出る。 Prier pour l'âme.(冥福を祈る)

細田傳造の詩を「ちゃんと」(笑)読む

「細田傳造の詩を「ちゃんと」(笑)読む」「ディック」(『納屋』1号)──「ミネ」なのかべつの人なのか。細田はテキトーなことを書いているふりして、ほんとうのことしか書かない。しかし意味は「隠されている」。宝さがしのおもしろさ。宝をさがしていく…

【詩】「挽歌」

「挽歌」詩というものは、だいたいにおいて、でたらめである。とくに定型でない詩は、言葉が従わねばならない規律などなにもないのであるから。ただ単に抽象的な言葉を連ねたものを詩と信じる人々がいて、とくに商品ではないのだから、その人のご自由である…

【詩】「ボヴァリー夫人、あるいは、絶望という名の電車」

「ボヴァリー夫人、あるいは、絶望という名の電車」Nous étions à l'Étude, quand le Proviseur entra, suivi d'un nouveau habillé en bourgeois et d'un garçon de classe qui portait un pupitre.ぼくらが自習にいると、校長先生がブルジョワの新入りと勉…

最果タヒ詩集『恋と誤解された夕焼け』

最果タヒ詩集『恋と誤解された夕焼け』(2024年5月30日、新潮社刊)「鯉と誤解されたナマズ」なんて言葉がふいに口をついて出た、誰もいない海。いい日旅立ち、山口百恵さん息子さんの結婚式はどこ?週刊誌記者がつきまとうから「放課後婚」(←本詩集所収の…

【詩】「あるいは、絶望という名の流星」

「あるいは、絶望という名の流星」「ここから入る者は、あらゆる希望を捨てよ」(ダンテ)ひとは完全なる無音の部屋に閉じ込められると、気が狂うそうである。芥川也寸史が『音楽の基礎』で書いていた。ラカンの顔写真を見ると、薄っぺらで饒舌な司会者のよ…

石川淳「西游日錄」

石川淳「西游日錄」(石川淳選集第十七巻所収) 吉田健一が、文学は楽しむためにあり、それを否定して鹿爪らし構えて読むのはつまらない、それが紀行文だからろいって軽視するに及ばず、てなことを『文学の楽しみ』で書いている。 和漢洋の教養に通じた石川…

【詩】「The Vulture、ベケットがゲーテをパロる」

「The Vulture, ベケットがゲーテをパロる」 1777年12月28歳のゲーテはハールツを訪れる 早朝の空に腐肉を求めるvulture(ハゲワシ、高橋康也が訳しているように 禿鷹(ハゲタカ)ではない。ハゲタカは死んだ肉ではなく、 生きた獲物を狙う)が舞っている。 …

詩誌『納屋』第一号

詩誌『納屋』一号(2024年4月9日発行、同人:金井雄二、坂多瑩子、田島安江、細田傳造)友人の細田傳造氏に「こちらからせがんで」送ってもらった。一ヶ月以上前に出ているはずだが、細田氏にはその旨聞いていたので、私としては、「まだかなー?」と心待…

サルトル『ボードレール』──ボードレールから遠く離れて

サルトル『ボードレール』(1956年、人文書院刊)──ボードレールから遠く離れて ボードレールの詩については、彼の「実存主義」を証すために引用されているのみで、文学的鑑賞とえいては、いっさい立ち入られていない。結局、サルトルは詩音痴であり、そうい…

【詩】「ヘレナの頭蓋骨」

「ヘレナの頭蓋骨」 妻あるオデュッセウスも守る会に加わりトロイアの 世界一美しいと言われるヘレナのため 戦争は始まり終わったあれは なんだったのか数百年経ち今おまえが 踏みしめるものはその女の頭蓋骨それでもまだ 世界は新しく遠い未来の災厄など知…

【詩】「ベケットのホロスコープ」

「ベケットのホロスコープ」地方のオバチャンが、おセンチな文句を並べ悦にいって、それが詩だと信じて、同好の士、「大御所」に媚びまくり、しかし態度は「上から目線」が滲み出る(笑)自らの年齢を大いばりで公表し、64歳なんて公表するの勇気(笑)に…

Kazuo Ishiguro "The summer we crossed Europe in the rain"

Kazuo Ishiguro "The summer we crossed Europe in the rain"(Alfred A.Knopf New York 2024)ノーベル賞作家カズオ・イシグロの最新作、にして詩集。レナード・コーエンのような歌にするための歌詞集。イタリアの日記漫画家、ビアンカ・バニャレッリのイラ…

【詩】「時間の終わり」

時間の終わり」「ぼくは書く、おまえの名を、リベルテと」という詩句がときおり頭をもたげる。オデュッセウスが乞食に身をやつして故郷へ帰ったとき、老犬だけはすぐに気がついて、安心して死んだ。のだったか。もう覚えていない。ひとの生を通過する時間の…

『センスの哲学』千葉雅也著

『センスの哲学』千葉雅也著(2024年4月、文藝春秋刊)──読まずにすませろ(笑)! このテの本は、浅田彰にはじまり、東浩紀…などなど連綿と出されている。根っこは、おフランスの「現代思想」である。「現代思想」という言葉は、「現代詩」と同じ、日本だ…

唐十郎追悼

なんといっても、記憶に永遠に残るのは、上野不忍池の水上音楽堂の、『唐版風の又三郎』。根津甚八、小林薫、軟硬の両二枚目がそろった。最後にホリゾントの幕がサッと落とされると、不忍池の生の景色が、劇的な風景に変わっていた。ダッダダダ、ダダダダ………

【詩】「テムズ川に来てみたら」

「テムズ川に来てみたら」テムズ川に来てみたら、まさに、エリオットが見えた。そのカーブの、開かれた景色の、向こう側の市庁舎の、未来に向けて手を伸ばしている、温かさ。おあつらえ向きに、フィッシュ&チップスを売っていて、ほら食べながら記念写真を…

【訳詩】ボルヘス「ジョセフ・コンラッドの本に見つけた手稿」より第一連

【訳詩】ボルヘス「ジョセフ・コンラッドの本に見つけた手稿」より第一連 En la trémulas tierras que exhalan el verano,El día es invisible de puro blanco. El día Es una estría cruel en una celosía,Un fulgor en las costas y una fiebre en el llan…

【俳句】「倫敦塔」

【俳句】 倫敦塔漱石探す聖夜かな

【鉛筆画】「枯れていく紫蘭」

【鉛筆画】「枯れていく紫蘭」 荒木一郎の『君に捧げるほろ苦いブルース』を思い出す、枯れていく紫蘭を描いてみた。Bye Bye まだ、夢のようさBye Bye 君、ドアの外の気に入りの紫蘭の花昨日の朝枯れたよ

【詩】「ブラッサイ、あるいは、秘部という名の宇宙」

「ブラッサイ、あるいは、秘部という名の宇宙」 駅の二階の出口は各通りへと続く歩道橋になっている。 そのすぐ出たところは植え込みになっていて、コンクリートの、 ちょっとした囲いがあり、それは、ちょっと腰掛けて座るのにちょうどいい。その一角に陣取…

詩集『ボードレールのために』発売のお知らせ

山下晴代 第19詩集『ボードレールのために』発売。 寄贈なし。 お求めはこちら↓ http://www.seichoku.com/item/DS2006218

蓮實重彥著『物語批判序説』

蓮實重彥著『物語批判序説』(1985年中央公論社刊) 読み返すことはない座右の書である(笑)。お得意の推理小説口調でありながら格調高い、「物語的にいえば」、矛盾するとも言える文体で、専門(博士論文?)のフローベールを中心に、近現代のフランス…

【詩】「闇と書物」

「闇と書物」闇と書物。それはボルヘスのテーマだった。暗い岸に漕ぎ着けて、生い茂る蘆の中を進み、やがて、神殿あとの廃墟に到り、祈りを捧げたあと、そのものは思い出すだろう。おのれが闇であったことを。そして書物は燃え尽きたことを。難解さを抱きし…

「春雨」

【春雨】旅人やかき乱されし春の雨