本
『ゴヤのファースト・ネームは』(飯島耕一著、1974年、青土社) A4判。装幀安藤元雄。しかしながら、安藤も、この詩集を理解していたとは言えない。装幀もよくない。発刊当時、私は大学生で、詩を書き始めた頃というか、なんとなく、書いていた。すでに、…
最果タヒ詩集『恋と誤解された夕焼け』(2024年5月30日、新潮社刊)「鯉と誤解されたナマズ」なんて言葉がふいに口をついて出た、誰もいない海。いい日旅立ち、山口百恵さん息子さんの結婚式はどこ?週刊誌記者がつきまとうから「放課後婚」(←本詩集所収の…
Kazuo Ishiguro "The summer we crossed Europe in the rain"(Alfred A.Knopf New York 2024)ノーベル賞作家カズオ・イシグロの最新作、にして詩集。レナード・コーエンのような歌にするための歌詞集。イタリアの日記漫画家、ビアンカ・バニャレッリのイラ…
『センスの哲学』千葉雅也著(2024年4月、文藝春秋刊)──読まずにすませろ(笑)! このテの本は、浅田彰にはじまり、東浩紀…などなど連綿と出されている。根っこは、おフランスの「現代思想」である。「現代思想」という言葉は、「現代詩」と同じ、日本だ…
蓮實重彥著『物語批判序説』(1985年中央公論社刊) 読み返すことはない座右の書である(笑)。お得意の推理小説口調でありながら格調高い、「物語的にいえば」、矛盾するとも言える文体で、専門(博士論文?)のフローベールを中心に、近現代のフランス…
TH.W.アドルノ『文学ノート』(三光長治他訳、イザラ書房)「おのれ自身を理解していない思想だけが、本物である」「アウシュヴィッツのあとで、詩を書くのは野蛮である」 『ミニマ・モラリア』に見られる有名なフレーズである。小林秀雄は、柳田国男のよう…
ユルゲン・ハーバーマス『事実性と妥当性』(河上倫逸・耳野健二訳、未来社刊)ハーバーマスの主著の第三期に位置する本書をなぜか亡霊の中から呼び戻し、このネット社会の混沌というより、さらにエントロピー化の進んだ世界で、どのように正しく思考すれば…
土井善晴『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)「料理して食べるという営みにあるのは、栄養の摂取、食の学び(マナー・知識)、空腹を満たす満足、おいしさの楽しみ、人間関係を深めるという目的だけではありません。人生にかかわるあらゆるものの起源…
『観光客の哲学 増補版』(2023年6月15日、ゲンロン刊)東浩紀著 著者のデビュー作『存在論的、郵便的』を期待を持って読んだが、結局、新しいエクリチュールが展開されているわけではなく、「学術論文的」であった。著者がどんなに「ゆるく」「テキトー」に…
村上春樹著『街とその不確かな壁』(新潮社、2023年4月刊)結局この著者は、文学というものがわかっていなくて、小説家デビューし、ベストセラー作家になっても、その事実は、まったく変わらず、本人も多少は理解していて、74歳になってしまって、焦ってこん…
ポール・ド・マン『読むことのアレゴリー』(土田知則訳、2022年12月、講談社学術文庫。もとの本は2012年岩波書店)──著者は「脱構築」を理解していない フランスで「現代思想」(というジャンルで括っているのは日本だけとか)がはやり(はやっていたのも、…
蓮實重彥著『ゴダール革命』(2023年2月10日、筑摩書房刊)──どうするゴダール? 特別新しい本ではなく、2005年に出た本の増補版である。「どうすればよいのか」。人は優れてゴダール的ともいえるこのつぶやきを、処理しがたい難問を前にしてみだりに口にし…
「たまたまの吉増剛造詩集」 「吉増剛造詩集」全五巻のうち、たまたま本棚にあった二巻、『黄金詩編』(1964-1969)と、『わが悪魔払い』(1972-1973)。この二冊は、できが全然ちがう。あとの方がひどすぎる。ことほどさように、この詩人は劣化してきた? …
『危険な純粋さ』(ベルナール=アンリ・レヴィ著、立花英裕訳、1996年刊、紀伊國屋書店、原題『La pureté dangereuse』(1994))──結局、レヴィの予見の通りの世界になった? フランスの「現代思想」花盛りののち、やってきた「新哲学派」。とはいうものの、…
『新潮2022年6月号(新潮社、2022年5月7日刊) 売れない文芸誌の凋落は激しいが、なかでもこの『新潮』が随一である。書き手は、三十年前とそう変わらず、お家芸?(笑)の、学閥、コネを思わせるメンバー。お土産で言ったら、上げ底も激しい。 四方田犬彦氏…
『現代詩手帖2022年5月号』(思潮社、2022年4月28日刊) 四方田犬彦氏の小詩集に関心があり、購入した。そうそう世間の人は目がいかないが、私は、T.S.エリオット『荒地』のもとになっているテクスト、フレイザーの『金枝篇』と関係があるかな〜?と思った…
最果タヒ詩集『さっきまでは薔薇だったぼく』──将棋で言えば藤井聡太(小学館、2022年4月13日刊) ついに詩集が、小学館から出た! 日本で唯一、メジャーデビューした詩人。有名詩人も、有名な文筆家も、自費出版をしているような詩の出版社なら、「企画モノ…
『ユーラシアニズム─ロシア新ナショナリズムの台頭』(チャールズ・クローバー著、越智道雄訳、2016年、NHK出版刊) 座右の書といってもいい書であるが、読んでも読んでもぬかるみにはまっていく。いま、まさに、この本のとおりに、というより、この本の…
『パンとサーカス』(島田雅彦著、2022/3/24、講談社刊)──阿部和重の『オーガ(ニ)ズム』をおすすめします(★) プロの作家は、たいていの場合、新人賞を通過し、ここで、筆力というものが問われる。しかし、この島田氏の場合、コネで文芸誌に載り、それが…
巻頭の「造花」がいちばんよいように思う。ゆえに巻頭なのか、短いからか。この調子で進んでいけば、もしかしたら、ウンガレッティ? しかし、あとは、感傷と古い意味での「現代詩」。しかし、さすが、プロ。文章はうまい。読ませる。しかし、この著者は、そ…
『anan(アンアン)2021/9/29号No.2267[美乳強化塾2021/倉科 カナ]』(2021/9/22、マガジンハウス刊) かつての月亭可朝の「ボインは、赤ちゃんのためにあるんやで〜。オトーチャンのためにあるんとちがうんやで〜♪」という歌を思い出した(笑)。誰もが、健全…
『ろくでなしの歌―知られざる巨匠作家たちの素顔』(福田和也著、メディアファクトリー、2000年4月刊) いまごろ、私がこんな本を買うわけはない。友人が間違えて二冊買ってしまったといって、さっき送ってくれたので、「すぐやる人」の私はすぐ本レビューを…
『この時代に想う テロへの眼差し』(2002年2月、NTT出版刊、木幡和枝訳)──「今はもう誰もソンタグなど思い出さない」 演劇科の卒論は、「オフオフブロードウェイを支える思想」というタイトルのパフォーマンス論だったが、スーザン・ソンタグにだいぶ影響…
たまに田村隆一を信望している人を見かけるが、はっきりいって、この人の書いているものは詩ではない。ではなんなのか? ただのメモというか走り書きというか──。ここには、清水哲男の、おビンボーな(笑)日常もなければ、教養も機知もなく、ただの酔っ払い…
『英語達人塾 極めるための独習法指南(中公新書) 新書』(斎藤 兆史 著、2003年6月24日、中央公論新社刊) かなり昔に購入し、線もたくさん引いてある。いちいち実践していた時期もある。だが、当方もそれなりに年季(実力とは言わないが)を積んで、何度か…
Amazonレビュー(2021/5/25)『現代詩手帖2021年5月号』(思潮社) たとえば、本誌の目玉であるはずの、高橋睦郞と藤井貞和の対談であるが、のっけから高橋の日本語に関する認識に首をかしげざるを得ない。古代の日本語も、今でも、半年も親しめば読めるよう…
『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著、2020年9月17日刊、 集英社新書) たいていこういった本は、ピケティとか、エマニュエル・トッドのおフランス勢か、あるいは、クルーグマン、ジャレド・ダイヤモンドが、十年くらい前に書いた本のパクりである。くわえて…
『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋 』──煽るのはよくない(★) 『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋 』(池田清彦著、宝島新書、2020年8月7日刊) 本書が出たのは、去年(2020年)の8月である。この時期は、コロナがピ…
『反日的日本人の思想―国民を誤導した12人への告発状 』(谷沢永一著、PHP文庫、1999年10月1日刊) かなり古い本であるが、Amazonをウロチョロしていて、本書のレビュアーが「つい最近」、絶賛していたので、興味を持った。そういや、「ヤザワだあ」によく似…
最果タヒ『夜景座生まれ』(2020.11.25、新潮社刊) 以前の詩集『恋人たちはせーので光る』で、(生年月日や学歴は出しても(笑))顔出ししない著者について、男性である可能性について示唆しておいたが、最新刊の本詩集では、一人称の多くが「ぼく」と使わ…