現象の奥へ

ベルナール=アンリ・レヴィ著『危険な純粋さ』

『危険な純粋さ』(ベルナール=アンリ・レヴィ著、立花英裕訳、1996年刊、紀伊國屋書店、原題『La pureté dangereuse』(1994))──結局、レヴィの予見の通りの世界になった?

 

フランスの「現代思想」花盛りののち、やってきた「新哲学派」。とはいうものの、私はレヴィしか知らない。なかなかの「イケメン」で、仏女優イザベル・アジャーニの恋人との噂も流れた。ありそうな感じもするが。「現代思想」では、ジャック・デリダに似た雰囲気。思想が? さあ、それは……。当時は、似非っぽい雰囲気も漂わせていた。しかし、なぜか急に、この人のことが思い出され、何冊かの著書を集め直した。「現代思想」の哲学者たちと比べて軽い感じはする。しかし、1989年にベルリンの壁が崩壊したあとも、事態は明白ではなく、完全に変化するには何十年もかかるだろうと言っている。果たして、事態は、レヴィが予見したような世界になってしまった。今、ロシア、ウクライナなどと言ってみても、1994年のルワンダの内戦ほど酷いものでもないだろう。ルワンダでは50万人が惨殺され、80万人以上が難民となった。インターネットはあったが、かくも克明に、ニュースで「中継」「克明に」中継されることもなかった。アフリカではウクライナ以上のことが「ひっそり」長い間繰り返された。そのときの証人が、レヴィの本だとも言える──時代になってしまったなあ……などと、私なんかは思うわけよ。