現象の奥へ

Entries from 2022-01-01 to 1 year

【詩】「プレザンス」

「プレザンス」プレザンス、それは、われわれの知覚の選択。丸ければ丸い、四角ければ四角い、表象を選び、現実のなかに像を現前させる。そこに介在するは意志、時間、瞬時に切り刻まれる時間。「私」の前に現れる現象を知覚、非知覚のどちらかのなかに選び…

【DVD】『ブリット』(ピーター・イエーツ監督)

【DVD】『ブリット』(ピーター・イエーツ監督、1968年)スピルバーグがリメイク(というのか?)するというので、さっそくAmazonでDVDを買った。帰省に持ち込んで鑑賞……。いろいろ著名な出演者(ロバート・ボーンはかぎりなく悪いし、ジャクリーヌ・ビセッ…

【詩】「近松」

「近松」十六世紀の最後の三十年間歌舞伎は最高潮となり、その中心は、豊臣秀吉だった。派手な衣装がすきだった、微賎の出ゆえ。歌舞伎の源流は、自称出雲大社の巫女、女芸人阿国大した芸じゃなかったが、もともとは盆踊りだった踊りを、大胆に踊ってみせて…

【詩】「右側に気をつけろ」

「右側に気をつけろ(SOIGNE TA DROITE)」 物語を詩にして完成させ、その日の朗読会に間に合うように届ければ罪はゆるされる。罪? なんの罪?物語? なんの物語?そして馬鹿殿は、詩を作り始めるのだった。韻も踏まない十四行だけある詩はソネットと呼ばな…

【詩】「隠喩」

「隠喩」世の中にいちばん多いもの、それは隠喩であろう。隠喩と隠喩をかければ隠喩になる。とらえ難く悲しく、生涯使いおおせぬ隠喩のために泣く清少納言。星は、すばる。超新星は10,000×9,998×……の隠喩を使い尽くして輝く。「単語はすべて死せる隠喩である…

【詩】「詩が詩に横切られる」

「詩が詩に横切られる」いま、1888年米国生まれの英国人、Thomas Stearns Eliotの「荒地」のなかのマダムが歩いている部屋のウィンドウが見えるが、そこを、1906年アイルランド生まれのフランス人になってしまったSamuel Beckettの「ホロスコープ」という詩…

【詩】「ブレイク」

「ブレイク」教育は、われわれがほんとうに感じたり欲したり、興味を持ったりすることを、隠す。有害なのは、そうして得られた知識ではなく、それがわれわれに強いる画一的なものの考え方である。と、T.S.エリオットは、「ブレイク」という論文のなかで書い…

「愛しているのか、恨んでいるのか」

「愛しているのか、恨んでいるのか」ときどき載せられる書き込みを、ひそかに覗いている。男を恨んでいるような、でも愛しているような。ほんとうに、あの男とあの女は、やってしまったのか。女は男をなじっている。ほんとに、知り合ってまもなくホテルに行…

【吉本隆明はフーコーに完全に論破されている】(「フーコーを読む」番外編)

【吉本隆明はフーコーに完全に論破されている】(「フーコーを読む」番外編)フーコーが来日したおり、蓮實重彥の通訳で、吉本隆明と対談する機会があった。それが本になっているのが、『世界認識の方法』(1980年、中央公論社)である。フランス語版の書物…

【詩】「メモリー」

「メモリー」人生でいちばん最初に飼った犬は近所で生まれたスピッツとおそらく雑種との混血で何匹か生まれたうちのその犬だけ、白い毛が短めだった。 わんわんウルサイのでベルと名づけた。一年もたたないうちにジステンパにかかって死んだ。実際、ジステン…

【フーコー『言葉と物』を読む3】Lire "Les mots et les choses" de Michel Foucault

【フーコー『言葉と物』を読む3】Lire "Les mots et les choses" de Michel Foucault(まだ「序文」(笑))フーコーはボルヘスの『続異端審問』のなかで中国の百科事典に言及、動物の分類の常軌を逸した様子に爆笑した。なにがおかしいのか? まわりにいる…

【詩】「ナチ」

「ナチ」ナチが悪であることは誰もが知っている。 しかし、ナチは一種の思想集団であり、人物そのものではない。その「思想」が裁かれる。どのような「思想」か。 それは、ハンナ・アーレントが、エルサレムで、元ナチの秘密警察の長であり、多くのユダヤ人…

【詩】「受刑者の方々」

「受刑者の方々」名古屋の刑務所で、22人の職員が3人の受刑者に対してくりかえし暴行を行っていた疑いがあると法相が明かしたニュース。「受刑者の方々にはお詫び申し上げます」ということだった。「受刑者」でも、「方々」である。「受刑者」に対する暴力で…

【詩】「アエネーイス」

「アエネーイス」羊飼いの老人のように、半分眠りながら、この物語を読んでいる。そのうち自分がアエネーイスであるような気がしてくる。アマゾネスに助けられ、這々の体でトロイアを逃れた。向かうはローマ。だったかなー?故郷は戦場。なにもかも打ち壊さ…

【詩】「実朝」

「実朝」「海は無数の剣」と、ボルヘスが書き始めたとき、実朝はすでに死んでいた。従兄弟だったかの僧侶に暗殺された。36歳の柿澤勇人が演じる18歳の実朝。そして、従兄弟の、坂口健太郎メンズノンノ演ずる北条泰時に、恋心を感じる。柿澤の無垢なまなざし…

【詩】「鏡」

「鏡」お願い黙っていて。ほかのひとにささやいてあげたならきっと、喜ぶでしょうけど。なんて、中村晃子は歌っていた。ドロン相手はダリダ。大柄なドイツ女。黙っていて、とは、秘密にして、という意味ではなく、口をきかないで、ウルサイから、という意味…

【詩】「雨」

「雨」はげしく、板庇を打つ雨は春の古句なかに閉じ込められて、無数の、雨に関する夢想を呼び起こす。La pioggia, la pioggia non esisteジリオラ・チンクェッティが歌う、ローマの存在しない雨「月さま、雨が」と、日本の芸妓の寄り添う雨。「春雨ぢゃ、濡…

【詩】「豊川(とよがわ)」

「豊川(とよがわ)」豊川は一級河川です。私がそのそばで生まれ育ったその川が一級河川であることを私は誇りにしてきました。海に近く、川であるけれど、干満があり、水がひくと、シジミなどがとれました。お盆には岸に無数の提灯。しかし、ある年の台風で…

『ゴヤのファースト・ネームは』(飯島耕一著、1974年、青土社)

『ゴヤのファースト・ネームは』(飯島耕一著、1974年、青土社) A4判。装幀安藤元雄。しかしながら、安藤も、この詩集を理解していたとは言えない。装幀もよくない。発刊当時、私は大学生で、詩を書き始めた頃というか、なんとなく、書いていた。すでに、…

【模写模写カメよ】ルノワール『レース帽子の少女』

【模写模写カメよ】ルノワール『レース帽子の少女』

【詩】「束の間の菫」

「束の間の菫」だれでも子供時代は思うみたいだ。生きているのは自分だけで、自分の見ていないところでは、世の中のひとは人形で止まっている。すばやく振り向くとまた動き出す。実際、止まっているところは見られない、仕組みになっている。そう、信じるこ…

【詩】「確定論」

「確定論」山吹の黄色と思いきや銀杏の黄色でもなく、名前の知らない黄色い葉をつけた木々に、雨の降る。わたしの名はしきぶときどきくる物忘れ名前が出てこない。わたしの上司の。それは鎌倉よりさらに古い時代。註解につぐ註解の、森。小少将どの、と、か…

【今井義行の最新作、「僕は、62才には、なるでしょう。」】

【今井義行の最新作、「僕は、62才には、なるでしょう。」】ダンテの『神曲』が書かれている言語は、ラテン語めいていながら、ラテン語に近い、中世期後期のイタリア語で、当時の庶民は誰でも読めた。そして、誰もが知っている聖書の地獄絵を言葉で描き、ひとび…

【松葉(く)寿司】

【松葉(く)寿司?】新しく「友だち」になった神田弘美さんて方が、「『ガーネット』というザッシに自分の作品が取り上げられている」とお書きになっていたので、つい、目の前にそのザッシがあったので、ぺらぺらめくっていると、(氏は北野丘という名前で…

【詩】「幽霊はどこにいる」

「幽霊はどこにいる」ひさびさ安部公房の戯曲、『幽霊はここにいる』をやるそうな、渋谷パルコ劇場で。安部公房+渋谷パルコ。に、いにしえの情熱の燃えかす、火のないところに煙はたたない。思い出おおき渋谷パルコ。あるときは、南沙織が、マネージャーら…

【詩】【創造者】

「創造者」物語は朽ち果て感情のそこここに棲みついた線虫のようなきれはし、は、なにも意味しない繭のなかでの変態は二週間の歳月を要し、それは宇宙にとって物語を立て直す時間だった。ゆけ! オデュッセウス!宇宙は未だネットを知らず、さいしょに筋肉。…

【詩】「創造者」

「創造者」物語は朽ち果て感情のそこここに棲みついた線虫のようなきれはし、は、なにも意味しない繭のなかでの変態は二週間の歳月を要し、それは宇宙にとって物語を立て直す時間だった。ゆけ! オデュッセウス!宇宙は未だネットを知らず、さいしょに筋肉。…

『パラレル・マザー』──本年度ベスト1(★★★★★)

『パラレル・マザー』(ペドロ・アルモドバル監督、原題『MADRES PARALELAS/PARALLEL MOTHERS』、2021年) 映画はもうオワコンと思ったが、それでも、ずっと見守ってきたアルモドバルだけは見ておこうと思ってでかけた。アルモドバルが凡庸な映画を撮るはず…

【詩】「カルヴィーノに捧げる赤い月」

「カルヴィーノに捧げる赤い月」織田信長が眺め、明智光秀がちらりと見た月食は、天王星ならぬ土星によって邪魔され、442年後、土星ならぬ天王星によって横切られることになった。こんや、それを、月の哲学を描いたカルヴィーノに捧げようと思うのだ。おりし…

【今井義行の最新詩】

【今井義行の最新詩】 かなり前から今井義行の詩の読者であったが、最近活動がないと思ったら、また、たいへんな目に遭って、「よみがえって」きて、その体験を作品にしている。すべては、そこに詳しく描かれているので、事情はすぐわかる。たいていの言葉は…