現象の奥へ

【詩】「実朝」

「実朝」

「海は無数の剣」と、ボルヘスが書き始めたとき、
実朝はすでに死んでいた。
従兄弟だったかの僧侶に暗殺された。
36歳の柿澤勇人が演じる18歳の実朝。そして、
従兄弟の、坂口健太郎メンズノンノ演ずる北条泰時に、恋心を感じる。
柿澤の無垢なまなざし。そうしてボルヘスは、
「(海は)満ち足りた貧困である」と続ける。
雪の降る日のなんとか参りの帰りの石段で、
恨みをもって待ち伏せた、従兄弟の僧公暁(こうぎょう)に殺される。
万歳のゑぼしをはしる霰(あられ)かな 胡布
ものゝふの矢なみつくろふ小手の上に霰たばしる那須の篠原 実朝
柿澤の無垢なまなざしに霰たばしり、悲惨な事件をかわいい恋文に変える。
「ごめんね」歌の意味がわからなかったの、きみからの。
「でも、今は、きみの名前でぼくを呼んで、実朝と」