現象の奥へ

【記憶の中からよみがえる映画】「インティマシー」

【記憶の中からよみがえる映画】「インティマシー(親密)」(2000年)パトリス・シェロー監督・脚本
出演、マーク・ライアンス、ケリー・フォックス(ベルリン映画祭金熊女優賞)

パトリス・シェローは、舞台の演出家だったような気がする。その昔、レンタルビデオブームがあった。劇場で見たかも知れないが、借りて、もう一度見たかもしれない。男と女が、ひょんなことから知り合い。ただ肉体関係だけを結び続ける映画。関係は、普通とは逆で、それがはじまりで、そこから、やがて、お互いへの個人としての関心へ移っていく。お互い家庭があったか、女性だけにあったか、忘れた。もう一度じっくり見たいとは思わない(笑)。ただ、人生の終盤を迎えると、記憶の奥から、よみがえってくる映画。エロティックなものはなにもない。結局、男と、女の関係は、これしかない、といえる。ような……役者同士のぶつかり合い、のように見える。

【詩】「よろしく哀愁」

【詩】「よろしく哀愁」

パリ同時多発テロのドキュメンタリーを見た。
アルジェリア移民の子息たちが、
いくつかのコンサート会場などで、銃を乱射した。彼らは、おもに心優しいいい子たちだった。
テロリストグループISに、
取り込まれ、憎しみをたたき込まれた。
アルジェリア。
それで思い出すのは、カミュの
『異邦人』だ。大した理由もなく、
ただ太陽がまぶしかったから、と、見知らぬ人を銃で撃った。
それで思い出すのは、PIed-noir(ピエ・ノワール、黒い足)
ということばである。アルジェリア生まれのフランス人(白人)を指す、ようだ。デリダ、セゴレーヌ・ロワイヤル……

「パパはピエ・ノワールなんだ」

と、フランス人の友人は、そっとうちあけるように言った。
私には、わからない。

アルジェリア生まれの、アルジェリア人は、ピエ・ノワールではなく、

ただの移民?

北朝鮮に拉致された日本人、勝手に行った人々、それらがまざりあって、

日本に、帰れないようになっている。

だから北朝鮮は、国際犯罪ではなく、

移民問題として、処理したがっている?

移民と、移民じゃない人と、

境を決めた以上、もう

お日さまも平気

よろしく哀愁。


ブラックホーク・ダウン

【記憶に残る映画】『ブラックホーク・ダウン』(リドリー・スコット監督2001年米)

 

「ブラックホーク」とは、米軍の汎用ヘリコプターUH-60 ブラックホークの強襲型、「MH-60L ブラックホーク」の事である。

ソマリアでおこった、多国籍軍とゲリラの市街戦を描いているが、実際、どんどんパチパチばかりで、せっかくの豪華キャストも、なにがなんだか、いう映画。しかしながら、しだいに、「戦争の様子」が見えてくる。毎度、米軍がお節介にも介入したかに見えるが、そうでもなく、現地の悲惨さ(アメリカよりかもしれないが)が浮かび上がる。オフオフ・ブロードウェイの、劇作家でもある、サム・シェパードが、米軍の長の少将を演じ、ゲリラ側の長と交渉する。ゲリラ側の長の得意げな作戦を聞きながら、超タカ派である少将が、進められた高級葉巻を口から離し、
「ひょっとしてこれは、ジェノサイドじゃないか」といぶかしむ。この場面が、渋い。
 「遺体はひとり残らず収容しろ」
 Nobody behind you
自然に覚えてしまった表現。


『マイケル』

『マイケル』──天才少年の家族の桎梏の克服劇(★★★★★)
アントワーン・フークワ監督/製作総指揮

マイケル・ジャクソン役は、甥の、ジャファー・ジャクソンが演じる。どことなく似ているが、ホンモノよりさわやかさがあり、素人っぽさがある。本作は、音楽映画ではなく、ましてや、マイケル・ジャクソン・ミュージックパレードのような作品ではない。それというのも、映画全体を包む音楽も、マイケルっぽくない。さすがに、「スリラー」や「ビリー・ジーン」は入っているが、それらの記録的ヒット曲は、とびきり大がかりに作られていて、圧巻であるが、この映画の主題は、地味に、ひとりの天才少年が、いかに家族(とくに父親)という桎梏から逃れ、逃れっぱなしではなく、それを克服するかである。ゆえに、マイケルのナイーブな心がていねいに描かれている。



 

Welcome aboard ma'am

デミ・ムーアの『G.I.ジェーン』(リドリー・スコット監督)。評判はよくなかったが、私は好きな映画ベスト10に入れる。女性将校が、ネイビーシールズの訓練に加わるハメに陥る。そこで、めちゃ扱かれる。ヴィゴ・モーテンセンの曹長は、とくに厳しい。晴れて、ジェーンがそれを乗り越えて合格したとき、モーテンセンは、バッチを渡しながら、船に迎え入れる。そのとき、「Welcome aboard, ma'am.」という。このma'amが、低く渋いモーテンセンの声で言われると、サイコーの快楽である(笑)。ロンドンでは、この敬称がしょちゅう付けられた。タクシーの乗り降りとか。

 

【詩】「私のように美しい女(la belle femme comme moi)」

【詩】「私のように美しい女(la belle femme comme moi」

それは、ロシア秘密情報部の合い言葉だった。
クリヤキン中尉の父はアメリカ西海岸の出身、母は、ロシア人だった。
ゆえに。クリヤキンはPの信頼が厚かった。
『源氏物語』を原文で読みこなし、細部について、気の利いた感想も述べる。この
最愛の男の意識は、英語で形成されていた。
ということを、彼は誰にも教えてない。しかし私は、あるとき、
それを知ってしまった──キスしながら、
車窓から覗き、にやにや笑っている男に仕返しの合図をしていた。左腕で、私を強く抱きしめながら、右手を軽く浮かせ、ての中指を立てて見せていた。
『政治とは他者を信頼すること」この、
Pの口癖を愛していた。
汽笛が鳴り、動き出した列車に、
われわれは飛び乗った。