現象の奥へ

【詩】「カルヴィーノに捧げる赤い月」

カルヴィーノに捧げる赤い月」

織田信長が眺め、明智光秀がちらりと見た月食は、
天王星ならぬ土星によって邪魔され、
442年後、土星ならぬ天王星によって横切られることになった。
こんや、それを、月の哲学を描いたカルヴィーノに捧げよう
と思うのだ。おりしもロシアは月の引力に引きずられ、
味方同士で撃ち合うことになった。
ご承知のように、地球は二度と同じ軌道を描かず、
時間との境目にときどき惑星と交差する。
人類はまたして、月に降り立つことを考えるようになった。
忘れてしまったのだ、あの感触を。
さまざまな言説が生まれ消え、
プーチン習近平金正恩について、クフウフクは追憶して語った──
そう、あれらは、月の磁気嵐にすぎなかった──
今宵私は、赤い月を、イタロ・カルヴィーノに捧げる。