現象の奥へ

【詩】「豊川(とよがわ)」

「豊川(とよがわ)」

豊川は一級河川です。
私がそのそばで生まれ育ったその川が一級河川であることを私は誇りにしてきました。
海に近く、川であるけれど、干満があり、水がひくと、シジミなどがとれました。
お盆には岸に無数の提灯。
しかし、ある年の台風で氾濫し、
多くの死者が出ました。
それを境に、コンクリートのりっぱな堤防が作られ、その岸に沿ってあった家々は、よそへ移動させられました。
私の同級生の家も何軒かありました。
そして、いまでは、私は脳髄に、
愚かな魂を飼っている。母と父が結婚してこの地に住んだのです。
その頃、私は、宇宙というものを完全に理解していました。
溺死者を何体も見ました。それから私は、
詩を書くことによって、鎮魂しているのです。