現象の奥へ

Entries from 2024-05-01 to 1 month

【詩】「The Vulture、ベケットがゲーテをパロる」

「The Vulture, ベケットがゲーテをパロる」 1777年12月28歳のゲーテはハールツを訪れる 早朝の空に腐肉を求めるvulture(ハゲワシ、高橋康也が訳しているように 禿鷹(ハゲタカ)ではない。ハゲタカは死んだ肉ではなく、 生きた獲物を狙う)が舞っている。 …

詩誌『納屋』第一号

詩誌『納屋』一号(2024年4月9日発行、同人:金井雄二、坂多瑩子、田島安江、細田傳造)友人の細田傳造氏に「こちらからせがんで」送ってもらった。一ヶ月以上前に出ているはずだが、細田氏にはその旨聞いていたので、私としては、「まだかなー?」と心待…

サルトル『ボードレール』──ボードレールから遠く離れて

サルトル『ボードレール』(1956年、人文書院刊)──ボードレールから遠く離れて ボードレールの詩については、彼の「実存主義」を証すために引用されているのみで、文学的鑑賞とえいては、いっさい立ち入られていない。結局、サルトルは詩音痴であり、そうい…

【詩】「ヘレナの頭蓋骨」

「ヘレナの頭蓋骨」 妻あるオデュッセウスも守る会に加わりトロイアの 世界一美しいと言われるヘレナのため 戦争は始まり終わったあれは なんだったのか数百年経ち今おまえが 踏みしめるものはその女の頭蓋骨それでもまだ 世界は新しく遠い未来の災厄など知…

【詩】「ベケットのホロスコープ」

「ベケットのホロスコープ」地方のオバチャンが、おセンチな文句を並べ悦にいって、それが詩だと信じて、同好の士、「大御所」に媚びまくり、しかし態度は「上から目線」が滲み出る(笑)自らの年齢を大いばりで公表し、64歳なんて公表するの勇気(笑)に…

Kazuo Ishiguro "The summer we crossed Europe in the rain"

Kazuo Ishiguro "The summer we crossed Europe in the rain"(Alfred A.Knopf New York 2024)ノーベル賞作家カズオ・イシグロの最新作、にして詩集。レナード・コーエンのような歌にするための歌詞集。イタリアの日記漫画家、ビアンカ・バニャレッリのイラ…

【詩】「時間の終わり」

時間の終わり」「ぼくは書く、おまえの名を、リベルテと」という詩句がときおり頭をもたげる。オデュッセウスが乞食に身をやつして故郷へ帰ったとき、老犬だけはすぐに気がついて、安心して死んだ。のだったか。もう覚えていない。ひとの生を通過する時間の…

『センスの哲学』千葉雅也著

『センスの哲学』千葉雅也著(2024年4月、文藝春秋刊)──読まずにすませろ(笑)! このテの本は、浅田彰にはじまり、東浩紀…などなど連綿と出されている。根っこは、おフランスの「現代思想」である。「現代思想」という言葉は、「現代詩」と同じ、日本だ…

唐十郎追悼

なんといっても、記憶に永遠に残るのは、上野不忍池の水上音楽堂の、『唐版風の又三郎』。根津甚八、小林薫、軟硬の両二枚目がそろった。最後にホリゾントの幕がサッと落とされると、不忍池の生の景色が、劇的な風景に変わっていた。ダッダダダ、ダダダダ………

【詩】「テムズ川に来てみたら」

「テムズ川に来てみたら」テムズ川に来てみたら、まさに、エリオットが見えた。そのカーブの、開かれた景色の、向こう側の市庁舎の、未来に向けて手を伸ばしている、温かさ。おあつらえ向きに、フィッシュ&チップスを売っていて、ほら食べながら記念写真を…

【訳詩】ボルヘス「ジョセフ・コンラッドの本に見つけた手稿」より第一連

【訳詩】ボルヘス「ジョセフ・コンラッドの本に見つけた手稿」より第一連 En la trémulas tierras que exhalan el verano,El día es invisible de puro blanco. El día Es una estría cruel en una celosía,Un fulgor en las costas y una fiebre en el llan…