現象の奥へ

『センスの哲学』千葉雅也著

『センスの哲学』千葉雅也著(2024年4月、文藝春秋刊)──読まずにすませろ(笑)!

 このテの本は、浅田彰にはじまり、東浩紀…などなど連綿と出されている。根っこは、おフランスの「現代思想」である。「現代思想」という言葉は、「現代詩」と同じ、日本だけのものだと思うが。だいたい、東大とか京大とか、旧帝国大学系(古い(笑))国立大学で哲学を学んだ方々である。この方々は、勉強が得意なので、哲学はもとより、文学、芸術。なんでもできる。だからエラソーに、啓蒙的態度で、エビデンスと参考文献を並べまくり(お約束のように「ラカン」なんかが入っている(笑))、「センス」という、論理的に説明のつかない感覚を、さりげなく学術的に「説明」してみせるのである。こんな本を読んで、感覚的な世界の不思議を学び、マジで「センスがよくなりたい」と思うなら、同じ東大出でも、茂木健一郎の本を読んだ方がはるかにためになる。東浩紀もそうだが、結局、どんなに「ポップな」口調であろうと、結局、学術論文の枠を逃れることができない。たとえば、石川淳吉田健一のように、自在に楽しむということができない。ゆえに、おもしろくないし、読後感も、インスタント食品を食べたあとのような不満足感が残る。
 大手出版社で、世界文学全集の仕事をしていた友人が、仕事とはべつに、東大権威の某氏訳、ディケンズの『バーナビー・ラッジ』を辟易しながら読了して、「学者の訳はダメだ!」と言ったことをよく思い出す。
 ま、そういうこと(笑)。