現象の奥へ

『光年のかなた』──スイスのヌーヴェルバーグは『鬼滅の刃』より俗っぽい(笑)(★★★)

『光年のかなた』(アラン・タネール監督、1981年、原題『LES ANNEES LUMIERE/LIGHT YEARS AWAY 』


 1985年には、アテネ・フランセで特集が組まれたらしい、スイスの作家、アラン・タネールの作品を、ひょんなことから、VHS(笑)で、拝見することとなったが……。私も大学時代は、アテネ・フランセに通っていたので、そこで上映、上演される、「特殊な作品」は、ときどきは見ていたような……。1929年の生まれのスイスの映画監督、タネールは、年代からいえば、フランスの「ヌーヴェル・バーグ」と比較される。しかしまー、この作品を見るかぎり、映像のカットなどはそれなりに見せるが、ゴダール(1930年生まれ)やトリュフォーなど、おフランスの作家とはダンチですね。これはひとえに、文学、哲学への愛が足りないものと思われます。

 スイスらしい山あり湖ありのへんぴな場所で、自動車廃棄場所兼ガソリンスタンド的なものを「置いている」ところに住んでいるロシア系の老人。周囲の人々は変人というが、実際に変人以外のなにものでもない(笑)。一人暮らしをし、怪しい行動をしている。ある若者が、彼に関心を抱き、近づいていき、いっしょに暮らし、老人からいろいろ、試練のようなものを与えられる。すべてをこなした青年は、認められて、老人の秘密を教えてもらう。老人のバラックのような家には秘密の部屋があり、最後はそこへもいれてもらう。老人は、鷲などの猛禽類を集めており、その動きや羽根を研究し、自分も飛ぼうと、巨大な羽根を作っている。目的は、「なん光年先の宇宙」。そして、或る夜、風が強く吹いているとき、崖から飛び立っていく──。あくる日、青年のもとに警察の車が来て、老人がおかしな事故にあったという。その現場に案内されてみると、老人が両眼を潰されて墜落死していた。鷲に復讐されたようであった。チャン、チャン〜♪  

 80年代は、『鬼滅の刃』より俗っぽい映画が、芸術派とされた時代であったのか──。