現象の奥へ

『観光客の哲学 増補版』(2023年6月15日、ゲンロン刊)東浩紀著

『観光客の哲学 増補版』(2023年6月15日、ゲンロン刊)東浩紀

著者のデビュー作『存在論的、郵便的』を期待を持って読んだが、結局、新しいエクリチュールが展開されているわけではなく、「学術論文的」であった。著者がどんなに「ゆるく」「テキトー」にふるまおうと、この著者は、東京大学で博士号を取った、その「基礎」から逃れることができない、絶望的な本である。

まえに、ナチスの収容所だったかの見学ツアーを催していたような気がするが、要するに、文学的にいえば「悪場所」でもなんでも、「物見遊山」で「お気軽に」めぐろうの、「哲学」なのか。しかし、そういった「思想」は新しくもなんともなく、どこか既視感が否めない。

この「観光客の哲学」が出る直前に、ものすごいことが起こってしまった。「あの」タイタニック見学の爆縮という事故である。酸素が切れるの時間をマスコミ=われわれは気にしていたが、なんと、はるかに早い時間に、潜水艇タイタンは爆発して粉々になっていたのである。観光客の哲学は、こうした事態にどのように答えるのか? ベンヤミンのパサージュなんかが引用されていたが、はて、どーでせう? もうどーでもいいのだ、屋根付き商店街なんか。あんなもの日本にもあったし。自由って、結局、文体が自由でないのだ。問題は、いかなる文体を持つかであって、「エビデンスの提示」的なものに気をつかっていては、しゃーないのだ。学者なのか、エンターテイナーなのか。ひとは後者には喜んで金を払うけどね。ということだ。せっかくAmazonで買ったけど、「Amazonで購入」のお墨付きが見せられない。だって、「ガイドライン違反(具体的にはなんら示されていない)でレビュー禁止」になっているんだもん(笑)。悔しいけど、早く来るので、Amazonで買うしかないんだけどね。自分で出版社を立ち上げたはいいが、ビジネスはジョブズに学んでね(笑)。