「源氏物語─The sonnets」9
9「葵(あふひ)、あるいはプリゴジン」
そのむかし、涙じゃないのよ浮気な雨にちょっぴりこの頬濡らしただけよ、
と緑川アコ、あるいは竹越ひろ子なる歌手が歌った、「カスバの女」なる流行歌あり。
そのカスバこそ、プリゴジンが経営するワグネル社員のような、
金で雇われた兵士たちのアルジェリアの居場所であった。
貧しい国の若者や、犯罪者など、
まっとうな社会をドロップアウトした命知らずの者たちが雇われ、
捨て鉢の者らは残酷なことも平気でする、
恐ろしい兵隊たちであるが、
兵士というもの、正規だろうが傭兵だろうが、
残虐を厭わないことに変わりはない。
そんなものがロシアに存在していたことじたい驚きである。
はかなしやひとのかざせるあふひゆへ神のゆるしのけふを待ちける
For shame, deny that thou bear’st love to any,
Who for thyself art so unprovident !