現象の奥へ

『新潮2022年6月号』──『現代詩手帖』以下(★)

『新潮2022年6月号(新潮社、2022年5月7日刊)

 

売れない文芸誌の凋落は激しいが、なかでもこの『新潮』が随一である。書き手は、三十年前とそう変わらず、お家芸?(笑)の、学閥、コネを思わせるメンバー。お土産で言ったら、上げ底も激しい。

 四方田犬彦氏の、「それでもロシアはなぜ懐かしいのか」。けったいな役者であった、大泉なんたら(名前ど忘れ(笑))の父親であった、大泉黒石という日露混血作家の「伝記」的要素をちりばめながら(というのも、この作家の伝記のような本を書いていたそうで、その「破片」?)、著者幼少時の思い出(トルストイの童話(笑)など)をあしらい、思いつくかぎりの「ロシア関連事物」、大急ぎで仕入れたかのような表面的、昨今ウクライナ情勢などを配して、ロシア専門家を気取り、「なぜ懐かしいのか」という文章を繰り返す。これはエッセイというよりは、素人の手記まがいのシロモノである。四方田氏といえば、文筆一本で食ってきて、著作も百何冊が自慢のプロであるが、こういう幼稚な文章を金を出して載せているのが商業文芸誌なら、もう「詐欺」に近い。それというのも、売れなくて当然と威張っていたから、このような体たらくになってしまった。私は、ロシア文学に関するもっと高尚ななにかがあるかと思って期待して買ったのだが(笑)。

 川端康成賞の選考委員に荒川洋治氏が名前を連ねているのも驚いた。はたして荒川氏に、すぐれた小説のいっぺんでもあったか? カルチャーセンター講師が関の山の実力ではないか(笑)。

 最果タヒの「連載長編詩」、このザッシの編集長と同じ、京大卒! 顔は隠しても、学歴は出している(笑)。いずれ、新潮社から詩集が出る?

 宣伝に載っていた、「ドナルド・キーン著作集全15巻完結」。残念ながら、キーン氏の最高作が入っていない。中央公論社のようなフォローはしていなかったのだろう。

 作家気取りの芸能人、小泉今日子。全身の写真があるのは、この「作家」だけ(笑)。それにしても、今更に「いい年こいたストリートファッション」、やめてください。もうズレズレですから。

 ……てなわけで、私のような筋金入りの文学愛好以外、1200円も出して、誰が買いますか(笑)?