現象の奥へ

【詩】「高村光太郎」

高村光太郎

ふつう、
月が出ている、とか、
星が出ている、とか、書く。
しかし、高村光太郎は、
「火星が出ている」と書いていた。
そんな詩を、料理研究家土井善晴氏のエッセイ集、
『味つけはせんでええんです』に引用してあった。
そういや、中学生の頃、高村光太郎を愛読していた。
長い文章を読むのが苦手で、読書感想文に困って、
そうだ、詩ならすぐ読める、とひらめいて、
「レモン哀歌」という詩の感想文を書いた。
担任の先生に評価されて、全国新聞コンクールみたいな賞に出してくれて、
二位をもらった。確か賞品は、万年筆だった。
テレビでは、木村光一が光太郎に扮し、佐藤オリエが智恵子に扮し、
智恵子抄」というドラマをやっていた。
メロドラマである。やたら、キスシーンが多かった。
「火星が出ている」という詩は非常に難しい。
なにが書いてあるかわからない。
要するに私は、もう詩が理解できなくなっているのだった。