現象の奥へ

【演劇】「スウィーニー・トッド」

『スウィニー・トッド』

 宮澤エマは、元首相の宮沢喜一のお孫さんで、お父さんはアメリカ人でアメリカの大学を出て良家の教養ある娘さんで、なんで芸能人になったのだろう? と思っていたら、昨日「徹子の部屋」(笑)に出てデビューまでのことを話していた。それによると、宮本亞門のミュージカル『スウィーニー・トッド』のオーディションに行くことになって、それは「落ちた」そうである。が、もうひとつの晴れやかな明るいミュージカルのオーディションもやっており、そちらに合格して舞台に出ることになったらしい。あの、明るくかわいい宮澤エマさんが『スウィーニー・トッド』を不合格になった……さもありなん(笑)。『スウィーニー・トッド』は、ロンドンで実際にあった、猟奇殺人の物語で、床屋のスウィーニーがカミソリで客をどんどん殺して、その人肉を妻がお菓子に焼いて売っていた……というものである。こんなものをミュージカルにしてしまうところがすごいが、かつて橋本治が、『四谷怪談』をミュージカルにしたらどうだ? みたいなことを書いていたので、おもしろいと思ったことがある。
 この『スウィーニー・トッド』を、私は、ニューヨークのブロードウェイで観た。登場人物の一人一人が、バイオリンやフルートなどの楽器をひとつ持ち、完璧に演奏する、それは洗練された舞台であった。このCDがほしくなり、CD屋さんで探してもらって買った。
 しばらくたち、日本の北九州劇場で『スウィーニー・トッド』が上演されることになり、それも観た。スウィーニーは、市村正親、彼をけしかける、まるでマクベスの妻のような妻に、大竹しのぶ。これはこれで、わかりやすくよくできていた。
 ついでに、黒柳徹子さんといえば、早大正門裏の喫茶店の二階で上演されていた前衛劇団「早稲田小劇場」の公演で、開場前の列に並んでいると、どこかで聞いたことのある声がする。みると、タマネギ頭の茶髪……外国人の男性といっしょだった。席は桟敷で、テキトーに詰めて座る。徹子さんらしき……というか、まんまであったが(笑)、その方は私のちょっと前におられた。誰はばかることなく「あっははは……」と大声で笑っていた。ときどき隣の外国人男性に英語で、「解説」(?)していた──。
 「徹子の部屋」で、「スウィーニー・トッド」と聞くと、これだけのことを思い出してしまうのであった。Chan、chan〜♪