現象の奥へ

『マーベラス』──マイケル・キートンを"恋人役"に持ってきたところがこの映画の新しさ(★★★★★)

マーベラス』(マーティン・キャンベル監督、2022年、原題『The Protege』)

 

「恋人」たって、かなりひねくってある恋人だが(笑)。 

 原題は、『The Protege』(邦題は「マーベラス」(marvelous)で「すばらしい」という意味だが、むしろ内容から遠くなっている))守られるべき人、つまり、ボディガードに守られるべき人だが、ボディガードを意味するかもしれず、ほんとうはもっと大がかりな「セキュリティ担当」である。それを、70歳のマイケル・キートンが演じている。マイケル・キートンは、悪ガキから出てきた印象があり、歳をとってもその印象は消えず、とくに眼がいたずらっ子のままだ。腕も教養もある、おとなの男。一方、孤児となったマギーを育てた殺し屋のサミュエル・L・ジャクソンは、父親の包容力で迎える。そういう二人の男を行ったり来たりするわけではないが、マギーQが、胸のすくようなアクションとしぶとさと、それを上回る美しさで見せる。

 「殺される者」も、「殺す武器」も、美しくあってほしい、なんかわれわれ「観客」の願いが集結した、まさに時宜を得た作品でした〜(笑)。