現象の奥へ

『ナイル殺人事件』──なんら新しいものなし+二流以下俳優たち(★)

ナイル殺人事件』(ケネス・ブラナー監督、2022年、原題『DEATH ON THE NILE』

 

 前作の『オリエント急行殺人事件』は、まだ見られたが、今回「調子に乗って」(?)作ったのか、まったく面白味なし、新鮮味なし、おまけに魅力的な俳優ゼロ。あのアーミー・ハマーでさえ、ペラい大男にしか見えず、しかも「まんま」の役柄であった。犯人の意外さもなし。だいたい「本格ミステリー」(この「本格」を理解せず使っているレビューアーを前回見かけたが(笑))と映画はもともと相性がそれほどよくない。なぜなら、すべて言葉で説明しなければ、ミステリーとして成立しないからだ。ケネス・ブラナーもどういうつもりで、ポアロに扮しているのか? だいたいイメージが違いすぎる。元奥さんのエマ・トンプソンの方が、才能があるように思われる。もうブラナーの顔も演出もうんざりである。

 本作の大きな錯誤は、愛の物語のようなものと、ミステリーをごっちゃにしていることによる。歯切れ悪く、深みもない。