現象の奥へ

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 』──本格ミステリーを楽しもう!(★★★★★)

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 』(ライアン・ジョンソン監督、2019年、原題『KNIVES OUT』)

 ひさびさ本格ミステリーである。従って、名探偵の謎解きを楽しむべし。アクションや、誰か一人が目立ってかっこよく、ということを期待してはいけない。名探偵は、007のダニエル・クレイグだが、やや太っていて、ポアロよろしく、淡々と事件を解いていく。こういう「芝居」の、こういう役は、台詞回しが命である。それを余裕でこなしている。また登場人物が、見るからにくせ者揃いの俳優たち。
 ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』を思わせる、ニューヨーク郊外の大邸宅が舞台である。世界的ミステリー作家、クリスタファー・プラマーの家である。息子や娘や娘婿一家が「寄生」している。外国から来た使用人もいる。古い大邸宅は、それほどのリッチ感はないが、味わい深いものがある。その作家が首を切られた遺体で見つかる。それに、現代的要素、スマホやネット、人種差別などが入り込む。死体は見つかるが、残酷なことは起こらない。さあ、名探偵のお手並み拝見。安心してミステリーを楽しみましょう。
 クラシカルなドラマであるが、さすがに最後のシメの音楽は、「今」を感じさせてくれます。ノリノリで帰りましょう(笑)。