現象の奥へ

【短編を読む】森鴎外「吃逆(しやくり)」

森鴎外「吃逆(しやくり)」(400詰め20枚、1912.5)

 

1,「かのように」などの、連作のようであるが、やはり鴎外の特徴の、外国語原語を、果たして読者が解するかどうかなど気にせず、どんどん登場させ(parvenu=成金、のごとく)、背景のスノビズムを表現している。一方で、芸者の世界があり、差別的表現をそのまま描くことによって、やはり、「カズイスチカ」のとうな、「客観的な」面白みを出している。

2,主人公(?)の五条秀麿と、その友人二人のスノッブな会話は、なにを言っているのか、よくわからない。しかし、わからないものを、変に物語に変換せず、そのまま提出しているところが、却って文学になり得ている。