現象の奥へ

【詩】「ダンテと海ザリガニ」

「ダンテと海ザリガニ」

って短編がベケットにあった。
ベラックァが風邪で寝ていて、
ベラックァはイタリア語を習っていて、
ダンテのところがあって、
それで……。
海ザリガニをゆでていたんだ。
英語圏の詩人たちにとって、ダンテは崖のようにそびえている。
「ダンテはラテン語ではなく、中世イタリア語で書いているけれど、その世界は、学問のない庶民にも理解できた」
とエリオットは書いている。エリオット自身、ダンテの「煉獄」から引用している。男の恋人を失った時書いた、「プルーフロックの恋歌」で。
海ザリガニとは、ロブスターのことだろうか?
そういや、グァムで、でっかいロブスターを食ったな。
あのとき、どうしても、ホンモノの拳銃を持ってみたくて、
射撃場へ入った。銃は、安全のため、鎖で繋がれていて、
十センチくらいしか持ち上がらなかった。
それでも、絶対安全とは言えないと思う。
銃はお好みを選べた。「リーサルウェポン」のメル・ギブソン
持っていた、小型のベレッタがよかったが、なかったので、
スミス&ウェッソンにした。かなり重かった。そして、
的にはあまり命中しなかった。まあ、
こんな遊戯はもうやってないだろう。いくらなんでも。
そんなわけで、なにがそんなわけで、だ?
海ザリガニは命を落とし、真っ赤な死体となってそこにあった。
煉獄は遠く、近く、
孤独はだけは磨かれて
今日も私とベケットの間に横たわっている。