2020-09-27 【詩】「張込み」 詩 「張込み」 大岡昇平は、歴史を歪めていると、松本清張を批判している。なるほど、それは、正当な立場と言える。だが、クリスマスイヴの凍える街で足踏みしながらカップコーヒーを啜って仕事中の、その雄々しい惨めさ、あるいは、惨めなプライドをどこへと繋ぐか それは、松本清張のあの短編の、一日の生活費十円を旦那からもらって洗濯物を干している主婦の 未来なき官能へと繋ぐ そのとき、逃亡中の昔の恋人に出会って、 その幸福に酔いしれた表情を 刑事は見た。その視点。 サンタクロースの格好をして足踏みしていたのは、 ジーン・ハックマン 人類の長大な時間のなかの たった一瞬の感情が 重なる──それは まなざし。 ま・な・ざ・し