「アレフ、片隅で光る非存在」
世界がまだ睡魔と戦っていた頃、
眠りに落ちる寸前に見える光景、
それこそ人間の脳にはめ込まれた原風景であり、
全宇宙の姿と言っていい。
すべての忘却を消すために、
ハムレットはロミオと入れ替わってみようと思った。
幾世紀が過ぎ、薔薇色の迷路はアエネーイスの運命を決めるために回り続け、
誰もが覚えているはずの狂気を帯びた暴君の名前を、
神は消した。
果たしてどの暴君だったか。
それは文字通り、星の数より多かったのである。
ウラジミールとは、永遠の来ないゴドーを待ち続ける
浮浪者であった時代もある。
あるいは、作家であった時代も。