現象の奥へ

「愚かな薔薇」

「愚かな薔薇」

夢の奥で待ち構えている夢。そいつに、つかまるな!
あなたから昼を洗い流す、
暗い水の底に消えろ!
無が与えてくれる死を憩わず、
淫らな驚異を笑い尽くせ!
さようならデミトーリアス、誰だったか、もう忘れたけど。
王妃が葡萄酒色の裳裾で
王の噂話をするとき、はて、
どちらの王なのか。
新しいのか古いのか。
迷宮に魅せられた女、その名は。
夢魔』というボルヘスの詩は、
「この愚かな薔薇は、なぜわたしの奥で芽吹くのか」
という行で終わっている。