現象の奥へ

【詩】「かきつばた」

「かきつばた」

捲あぐる簾のさきやかきつばた 如行

孤独は守られねばならぬ。
夢は他人の夢に混じらねばならぬ。
シリア人の乗った船は汚水を含んでいなければならぬ。
古句にイタリアは混じらねばならぬ。
原書『資本論』に誤植がなければならぬ。
ヘブライ人は亡骸を彼方へ運び去らねばならぬ。
そして、
Pは1/2秒だけ、別れた妻のことを思い出した。
簾はロシアにはない。

簾まけ雨に提来る杜若 其角