現象の奥へ

【詩】「Cry me a river」

「Cry me a river」

闇は時間を消す、
と言ってKは卓上の電灯を消した。
ところで今度の事件は
おれはやってきたFBIのニーチャンに聞いた。
手紙が盗まれたんだ。
またか。
ところでラカンはなんで「盗まれた手紙」の講義なんかしたのか?
それは
Kはそう言いかけてコニャックのグラスを持ち上げた。
言語の象徴的秩序
を広めようとしたから
ははは……
FBIは、パリの夜の風に吹かれて転がっていく
落ち葉のように笑い、
ありきたりなフロイト、そんなもの
どんな解説書にも載っている。
悪いな、にーちゃん、あたし、
解説書しか読んでないんだ。
時間は確実に消えていたけど、
すでに、Kには、FBIが犯人であることは
わかっていた。
さあこれから、
その手紙を
探すんだな
と、
闇のなかでもあんぐり口を開けているのがわかる
FBIの若造に向けて言った。
おれ、パリ警視庁警視、
ダニエル・ボードレールは、
ルーブルから借りて自宅に安置してある
ミイラが気になった。激しく、そう、
激しく
おれのために泣いてくれ。