現象の奥へ

【詩】「李麗仙に捧ぐ」

「李麗仙に捧ぐ」
 
いつも下町のバラックの中から現れて
男のような声で下手なダンスを踊る
けれど決して女は売らず
語りかけるような棒読み
 
はじめは金粉ショーの暗闇からやってきて
煙草を吹かすこれでも池袋のブゲイ、舞台芸術学院中退
そうあたしの日ゲイでのセンセイもそこで教えていた
から義姉のやうなもんだね
 
何十年も経って脇役たちは落ちぶれた爺になってSNSでかろうじて生き延びている、だけどあんたは潔くアングラのまま死んだ
案の定劇作家の夫には若い女ができて
 
まるでNHK朝ドラの「おちょやん」そっくり
女優の運命はみんな同じそこだけ紋切り型
闇、華麗なる闇をあんたはくれた。