現象の奥へ

【詩】「影」

「影」
 
胴体を失ってしまった浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)は、
本居宣長に出会い、
「どれでもいいから、胴体を選びなさい」
と言われた。さまざまな胴体の並ぶ
クロゼットのような場所に入って
内匠頭は胴体を選んだ。
「おお、それを選んだか!」
と言って宣長は満足そうに笑った。それは、
ジャーン!
筋肉もりもりのシュワちゃん
ターミネーター姿のものであった。
そして二人は真っ暗な
鈴ヶ森をゆく。
ここでは、魂たちが舞っている。
「せ、せんせい!」
浅野は宣長への愛に溢れ宣長を抱きしめようとした。
「やめなさい。われわれは日本人だ。きみの胴体が外国人になってしまっても。それに、きみは影にすぎない。私もね」
 
《Or puoi la quantitate comprender dell'amor ch'a
te mi scalda, quand'io dismento nostra vanitate
trattando l'ombre come cosa salda》.
 

f:id:palaceatene:20210919012930j:plain