現象の奥へ

【詩】「ジェノサイド」

「ジェノサイド」

ヒトラーの『わが闘争』を読むと、

最初のユダヤ人への嫌悪は

匂いである。

生理的なものはどうにもならない。

理性はまったく役にたたない。

どこから来るのか、この憎しみ。

しかして、異なものすべて、民族のすべてを

消そうとする。その存在が許しがたい。

しかしそれは、「認定」されねばならない。

そういう事実があっても、国連のような公式機関が

「認定」せねばならない。

ブラックホーク・ダウン』というソマリア

紛争をアメリカ軍が鎮圧に向かい、

予想に反して米軍に、大量の犠牲者を出してしまう映画で、

最初に、サム・シェパードの将軍がいうのだ、

ソマリア人の「ビジネスマン」に向かって。

「内戦というが、これはジェノサイドじゃないのかね」

シェパードの抑えた言い方に

そのすべてが表れている。

それは骸(むくろ)のように、

ある日、土のなかから掘り返される。

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