現象の奥へ

【詩】「ねぶか」

「ねぶか」

マンションの通路でお向かいの奥さんから

「ねぎいりませんか?」

と言われ、

「いります」と答えた、

なんでも山梨の叔父さんの家庭菜園で取れたねぎを、ねぎばかり

どっさり送ってきて、それも今回二回目で

困っているとか。

もらっていただき、ありがとうございました。

などと感謝され、

ビニールごともらったネギを

ベランダで

枯れたり腐ったりした青い部分を花ばさみで切り、台所で洗い、

太いのと細いのとより分ける。

私はわりあいよくネギは買う方ではないかと思う。

買ったネギと、天然のネギの違いは、

ネギじたいの密度と、

太さである。太いのは、スーパーで売っている白ネギぐらいあり、

細いのは、万能ネギ程度だが、

万能ネギのように、青い部分は少なく、

どれも、白いところが多い。

昔、豊橋で、年寄りが、

「ねぶか」と言っていた言葉を思い出す。

根の部分に多く土をかけるので、

白いところが多くなり、

それをねぶかと言うのだろう。

青い部分はすぐに枯れるが、

白い部分は長くもつ。

こうして人々は

冬を知り、

感じ、

 易水にねぶか流るゝ寒さかな 蕪村

刺客を思うとき、私の脳裏に浮かぶのは、

江戸の街をさまよう

大石内蔵助