現象の奥へ

【詩】「Petites Madeleines(マドレーヌちゃん)」

「Petites Madeleines(マドレーヌちゃん)」

 

「もう何年も前のことであったが、コンブレーで、眠るとき、芝居でも物語でもなかったものは、

私にとってはすでに存在しない、

冬のある日、ママは私に、飲む習慣のなかった紅茶をすすめた」

"Du côté de chez Swann" folio版44ページ、

に、登場するマドレーヌ。

ちっちゃくて、ホタテ貝の殻で、かたどられたような。

ほんとうに貝みたいにぷっくりと濡れていて。

それを、Petites Madeleines(マドレーヌちゃん)と呼んだ。

無意識的記憶と意識的記憶。

感覚的な日常の描写ではなく、批評なのだ。

Proust は、批評の代わりに、これを書いた。

Sainte-Beuveへの反論の代わりに。

しかして、物語は、

円環をなす。