現象の奥へ

【詩】「明日は帰ろう羅生門」

「明日は帰ろう羅生門

激しい雨に降り込められて、頬のニキビを押さえつつ下人は、
自分がディカプリオだった頃を思い出す。
都大路は荒れ果てて、
人心は狂い、
同じレオナルドでも、ダ・
ヴィンチ
写生用の死体がいるので、死体のメッカ、
ここ羅生門の二階まできた。Zut!
すでに髪の毛は鬘屋に売りにいく、
婆に抜き取られていた──
新型コロナは形を変え
いまは、新種が、でかい顔してはびこっている山中伸弥
ああ! ノーベル賞取ったら、
弟子の傳ちゃんを授賞式に招待しよう!
なんちゃって。かつては、
洗濯をした川の名前を忘れ、
薔薇の名前もついでに忘れ、
そう、月と星に背いて、
ディカプリオは、タイタニックの夢を見るのだった。
そこではタイタニックの客たちが逆に、
タイタンの爆縮を見学していた。
蔓屋に売られた、ほんものの人の髪の毛が
ゆらゆら海中で揺れている。そんな夢を見ながら
ディカプリオは、激しい雨に降り込められる
下人こそおのれの本性であると納得する。