現象の奥へ

本能寺の変

本能寺の変

信長がNHKのテレビドラマのように、そこで明智光秀の送った殺し屋に殺されたという史実があるわけではない。ただフロイスの『日本史』には、本能寺は焼け、そこに信長は泊まっていたようだが、遺体は見つからず、骨ひとつ発見されなかったとある。その後、光秀は道なき道を逃げ、途中百姓らに見つかり、殺されたのではなかったか。家康は、確か中国地方にいた秀吉を援軍として待った。この二人は、信長側である。本能寺は、日蓮宗の寺で、フロイスによれば、日蓮宗の寺の庭では、本能寺以外でも、キリスト教徒や浮浪人などの処刑〔火あぶり)が行われ、その際、女や赤ん坊も混じっていた。信長のした残酷なことはこのことがいちばんであったらしい。つまり、信長は、ヒットラーのようなことをやっていたのである。NHKの脚本は、このあたりは完全に無視。私は二十年くらい前、京都の本能寺を訪ねたが、鴨川のそばにあった(と思う)本能寺は、もとの寺が焼けたあとに移転したものであった。数回そういうことがあったらしい。それでも、門には、「本能寺」と記されている。りっぱな経檀が中央にあり、奉られているのは、豊臣秀吉という。
 NHKの『どうする家康』の信長役、岡田准一は、思い入れ過ぎでよくない。なにかロマンを持っているみたいだ。『麒麟が来る』の染谷将太の方が、これまでにない感じでリアルであった。リアルとは、これまでない、と、思わせるべきだと、一応、大学で「演出」専攻だった当方は思うのである。