現象の奥へ

【詩】「不安」

「不安」

不安は現実そのものである。
力を持って形而上学と戦う。かつて、
ドストエフスキー
地下室で戦ったように。かつて、
ハイデガー
世界を構築したように。それらは、
むくむくと
宇宙のなかで沸き起こる
闇よりも暗い、
精神よりも深い、
ボルヘスの恋人は白い
腕を鏡の向こうから伸ばしている。
不安は現実。
形而上学と戦う。
恐怖を友として。そのとき言葉は
流れ星ように
宇宙空間を流れていく。