現象の奥へ

【詩】「須磨(すま)」

「須磨(すま)」
 
架空の人物と実在の人物との間は、言葉が欠かせない、
または、過ちに罰が必要なのと同じだ。
源氏はそう自らに言い、須磨へ行く決心をした、まるで、
実在の人物のように、悲しみだけが地面に降りそそぐ。
いま、月の出を待って思いのたけを吐露したかと思えば、こんどは、
きみのことを思っている、欲望が雲のように月を覆うのだ。
きみとふたりっきりになりたい、いやそれはいけないと考えなおす。
また、ときには、海に流れゆく人形にわが身をかさね、
歴史に現れた亀裂の理解に苦しむ。
渋谷では若者がウイルスなんてかんけーねーと遊びほうけているそうだ、
そう、オレっちは軽い症状ですむしさー、死ぬのは年寄りだ、
そうですかね。そこはまだ都にすらなっていない、
 そこはまだ、石ころごろごろ、ヤブ蚊がぶんぶーん、だけど〜♪
 知らざりし大海(おほうみ)の原に流れきてひとかたにやはものはかなしき