現象の奥へ

【詩】「花散里(はなちるさと)」

「花散里(はなちるさと)」
 
だがコロナが私を捕らえて、いっさいの逃げ道を認めず
覆い尽くしたとしても、どうか平静でいてくれたまえ。
コロナというのはウイルスの一種で、
ウイルスというのは、核だけの生物と無生物の中間のやつだ。
表皮はなくて、つまり、詩はなくて、
現実だけがむき出されたやつだ。
そやつが手にするのは肉体にすぎず、
私の魂はこの詩となってきみを守る。
なんて、シェークスピアが美貌の青年に贈ったかどうか、
源氏はもの思いつつ里まで来たが、
ほととぎすもいっしょについてきた。
昔の女はすげなくて、ただの知り合いの女の方がなつかしい。
 もしかしてほととぎすクンこないだの子?
 橘の香をなつかしみほとゝぎす花散る里をたづねてぞとふ