現象の奥へ

【昔のレビューをもう一度】『トレイン・ミッション』──ダメなジジイが一番スゴイ(笑)

トレイン・ミッション』(ジャウマ・コレット=セラ監督、 2018年、原題『THE COMMUTER』)
2018年4月11日 21時39分

のっけから、ダメなジジイ丸出しのリーアム・ニーソン。実際は65歳ながら、60歳になって警察からトラバーユした保険会社に勤めて10年たったところで、突然リストラされる役どころ。妻になんて言おうかと意気消沈のまま、ニューヨークのマンハッタンあたりから、郊外の家へと、いつもの通勤列車で帰っていく(しっかし、マンハッタンで働いている人々がみんなマンハッタンに住んでいるわけではなく、やっぱり、かなり時間をかけて郊外へと帰っていくんだなーって、この映画を見て思った)。勝手知ったるいつもの列車なので、混んでいても、空席を見つけられる。そこでやっと座ると、見知らぬ女が現れて、「ゲーム」をしかけてくる。「プリンという人物を見つけて、鞄を奪って」だったかな〜? 報酬は列車内にあるわ、みたいな。トイレに行って捜すと、床近くの空調器のフェンスの内側に、袋入りの札束があった。家のローンに、息子の大学資金、貯金はまったくない。で、喉から手が出るほどの金なので、もらってしまう。それで、女がしかけた「ゲーム」に巻き込まれていく──。

 キレのいいカメラワークが、のっけから、★三つかな〜と思って見ていると、やがて、第一のどんでん返しで、★は四つになり、第二、第三と、後半たたみかけていくように盛り上がっていくアクションとミステリーに、★は五つまで昇った。

 結局、「プリン」とは、ある権力がらみの殺人事件の目撃者であり、「プリン」はその「証拠」を鞄に入れていた。心強い味方と思っていたNYPD時代の後輩が、実はこの事件に絡んでいて、ワルと思われていた上司が、ちゃんとした人間だった。この役を、『ピアノレッスン』のサム・ニールが演じていて、ほかに、なつかしの、エリザベス・マッガバン(私は昔、マッガバンに似ていると言われたが、老けた彼女もまた私に似ているような気がした(笑))が、リーアムの妻役で登場する。

 リーアム・ニーソン、角度によっては、『13日の金曜日』のジェイソンに見えないこともない(爆)が、まー、実直なジジイ感がよく出ている。しかし、映画は、このジジイにトム・クルーズ(んー、いい勝負のジジイに入りつつあるが(笑))なみの活躍をさせる。まさに、「ミッション・インポッシブル」通勤列車版である。だから、邦題も、「ミッション」とついているのだ(笑)。どうせこんなジジイに大したことはできまいと、高をくくっていると、それがどんどんエスカレートして、あれよあれよというまに、インポッシブルなことをこなしている。そして、まー、最後のかっこいいオチ。胸がすくとはこのことだ。まさに、これからのジジイ映画に希望を持たせる終わり方である。音楽もいい。小僧はデカいロボット相手に闘ってろってか?(爆)