現象の奥へ

『ANNA/アナ 』──ビッチに乾杯!(★★★★★)(ネタバレ注意!)

『ANNA/アナ 』(リュック・ベッソン監督、2019年、原題『ANNA』)

 リュック・ベッソンと自分は、ほとんど同じことを考えているのではないか?と思うぐらい今回の映画には興奮した。作られる女スパイとは、どうせ、KGBの幹部役のヘレン・ミレン(父はロシア人のdame(デイム)、イギリスの女性に与えられる称号で、男性のsir(サー)に当たる)の言うとおり、部下がスカウトした「その女」は、「せいぜいハニー・トラップにしか使えない」。ハニートラップとは、昔からある「色仕掛け」である。アクション部分は、男が登場する。それでも、シャーリーズ・セロンは、がんばってアクションをこなした。大柄な体で、男を引きずり回した。変装もあれこれ、さすが、元モデル?である。
 ベッソンは『ニキータ』で、不良少女を女スパイに変えた。しかし、おフランスアンヌ・パリローは、のち、ハリウッド版でリメイクされた時、スリムなブリジッド・フォンダの、すばやい動きに、もったり感しか印象に残らなかった。その後、『ルーシー』とかなんたらとか、似たような作品があったが、どうせと思ってスルーしたが、今回、KGB(今もこの名称が存在するのか、わからない)とCIAが、あれこれ入り混じってのスパイ合戦?)のストーリーとあらば、なんとなく虫が騒ぐ(笑)。で、駆けつけると……
 女スパイは、とんでもなく進化していたのである。007も、ジェイソン・ボーンも、マッツァオなアクションを華麗に決め、ハリウッド女優たちは、みんな太った豚に見える(笑)。ロシア人モデルの、サッシャ・ルス、すごい! 彼女に比べると、ミラ・ジョボは、大根役者に見える(笑)。絶世の美女の役だが、正直、顔は地味めである。スタイルは抜群。その地味めの顔が時おり、世界のどこにでも見られる孤児の泣き顔に見える。そこがいい。そして、頭脳明晰の役だが、まったくその通りに見える。その証拠として、チェスが得意という設定が説得力がある。
 結局、「今更」、KGB V.S. CIAでもないので、各組織の「人事」で国家間の関係もどうとでもなる、という設定がリアルであり、強硬派の「今の」KGB長官を暗殺……てストーリーになっていく……。アナは二重スパイになりそうになるが、結局、おのれを貫き、KGB、CIA、どちらにも愛する男を持つ。そして、円満な?三角関係へと。信じられない!? いや、私はこういう状況を夢見ていた(爆)。どっちもいい男なのである。幼い頃両親を亡くしたアナは、「自由であったことなど一度もない。だから、自由がほしい」「いいわ。実現してあげる」と答えた、元凄腕女スパイの上司、オルガこと、ヘレン・ミレン。「アナが裏切ったと知って」銃を持って追いかけていき、彼女が気づいて振り返った瞬間に、バキューン、バキューン、バキューン。倒れるアナ。死んで自由になったのか?
 場面が変わって、数ヶ月前?(本編は時間の順序の入れ替わりによってネタを見せる。アイデアである) CIAとの接触をオルガに打ち明けたアナ。「もうあの長官も終わりだわ」。結局、自らが長官の地位につき、パソコンからアナのデータを消そうとする。アナはアナで、約束通りに、防弾チョッキを着ていて、撃たれて倒れ、死者のふりをしたあとパリの公園の茂みから脱出。
 データを消そうとしたオルガが画面を見ると、アナが現れ、「もしもの場合を考え、そちらの弱みのコピーを取っておいたわ」
 「ビッチ!」とヘレン・ミレンはつぶやき、消去キーを押す。
 ビッチに乾杯!