現象の奥へ

【詩】「恋」

「恋」
 
Dem Geier gleich,
Der auf scweren Morgenwolken
Mit sanftem Fittich ruhend
Nach Beute schaut,
Schwebe mein Lied!
 
餌を漁る偉大な猛禽のように
やさしい翼を休め
重苦しい朝の雲、
獲物はいないかと見回す:
そのように私の歌よ高く飛べ!
 
人妻への燃える恋心を抱え
ワイマールのハーツ山へ
表向きの目的は
鉱山の調査
若き
ゲーテのこの歌に
祝福あれ!
 
と若くして年老いた
The Vulture
という詩を作った
 
dragging his hunger through the sky
of my skull shell of sky and earth
 
飢えを引きずりながら
天と地のわが頭蓋を横切る
 
名詞を大文字で書くドイツ語に対抗するため
ベケットは文の始めでさえ大文字を使わず
すなわちすべての文章において
大文字を使わず
卑小な生き物の命を祝福している。
 
高校一年の時
ベケットに出会って、
私も永遠に年をとった
その鉱脈は
ゲーテまで行く道だったのか
深いところに燃える
恋を掘り出すために。
 

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