現象の奥へ

【詩】「Let us go then」

「Let us go then」

 

T・S・エリオット自身の絡みつくような肉声を聴いている。今夜は、The Love Song Of J.Alfred Prufrock。

夕暮れが空いっぱいにひろがり、誰かは急いでいる。

安ホテルに一夜だけの宿をとり、どこかの窓辺では、

女たちが行ったり来たりして、

ミケランジェロについて語っている。ただそれだけの、

人間の時間。悲しい、もの悲しい、殺人事件でも起こってほしい。

あなたと私はついに出会わず、私は九十一歳の母親と喧嘩した。

もはや筋肉は垂れ、ミルク色の入浴剤のなかでも海藻のようにふにゃけている。私は、

新年を寿ぐ気持ちを失ってしまった。

Let us go then

夕暮れを、夕暮れを、夕暮れを、

探して。