「Nathalie Sarraute の『ICI(ここ)』」
Ici(ここ)というのは、当然のことながら名詞ではない、
副詞である。なぜなら、
なんら実態はない。にもかかわらず、サロートは、それ、
について20章も書き続ける──。
人物でも、物でも、記憶でも
ないものが、
Colmater(ふさぐ)、どこを?
Ici(ここ)。
ここってどこ?
Ici(ここ)。
Frêle(弱々しい)、voûté(アーチ型に曲がった)、
そいつがはめ込まれる(s'encastrer)、trou(穴)に。
ここには彼、しかいない、決闘。
最後のことば、Arcinmboldo(アルチンボルド)。スポーツカー?