現象の奥へ

「別れ、あるいはカルヴィーノの黄昏」

「別れ、あるいはカルヴィーノの黄昏」

「黄昏が別れをためらわせた」とボルヘスは書く。

遠く近い砂漠の、

Duneと呼ばれたその星の天上では、

イタロ・カルヴィーノが月までの距離を測っていた。

ボルヘスが測っていたのは森の昏さで、

今宵、いろいろな言語のカルヴィーノがあるが、

今宵はこの言語で読まねばならないだろう。

見よ、鈴木保奈美が、朝ドラで

中原中也をこれ以上ないほどの

うまさで朗読している。

「さようなら、さようなら」

さようなら。

主人公の夫の母親である彼女は、

なんのために中也を持ち歩いているのか?