現象の奥へ

最果タヒ詩集『不死身のつもりの流れ星』(PARCO出版、2023/2/1 )──すでに陳腐化(★★★)

最果タヒ詩集『不死身のつもりの流れ星』(PARCO出版、2023/2/1 )──すでに陳腐化(★★★)

新しいものも、画期的と思える感性も、書き方も、詩というものへの味方も、同じスタイル感覚を繰り返せば、陳腐化する。出版社は変わっても、装幀は似たようなシリーズを続けているのは、職業作家でもよくあるが、そうした、「見れば誰の作品かわかる」装幀に、「今となってはなんの意味」があるのだろう? 確かに、よくある自費出版系(ほとんどであるが)の詩人よりは抜きん出ているようで、大手出版社から詩集が出ているものの、その出版社が一冊で変わっているところをみると、それほど売れてはいないのであろう。とくに、今回は、「個展」で出品した作品(詩の)が中心になっている。

 確かに、詩(文字、言葉)を、「アート」と考えることもできる。作者自身、すでにそのような作品の書き方をしている。しかし相変わらず、「きみ」「ぼく」(今回は、一人称は「ぼく」のみである)、「愛する」「愛さない」「すき」「すきじゃない」「天体」などなど、語彙は少ない。いったい、なんなんだ? ここに展開されるのは、「高校生の愛の世界」である。それも、かなり前の高校生。いまの高校生はこんなこと考えているのか? それでも★が三つなのは、切り口はさすがにすぐれているような気もする。そのへんの、オバチャン詩人ではこうはいかにだろう(笑)。