現象の奥へ

【詩】「若き宣長と源氏というテクスト」

「若き宣長と源氏というテクスト」

すでに時は過ぎ、誰も、自由に源氏を読むことはできず、
夥しい註釈の森で、十九歳の宣長は、
式部を追って、深みに入る。
それはちょうど、ニーチェがテクストの森に足を踏み入れたごとく。
まずは男に書かせたる物語を、
その細々としたところは、女に任せろ、
という説を蹴り、
宣長は、式部ひとりが定めたと確定する。
結果、われらはこの物語を、
あやしき寂聴なる女坊主はさておき、
与謝野晶子の手を借りずとも、
想像することはできる。
書誌学は、ミシェル・フーコーもすなり。
ただテクストへ!