現象の奥へ

『源氏物語─The sonnets』4

源氏物語─The sonnets』4

 

4「夕顔、あるいは、記憶よ語れ」

 

身分の低い階級にもいいおんなはいるんだ、

ということを、源氏は頭中将に知らされて

そんな女との出会いを果たす。

それは中将の愛人であった。

寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔

その女は怨霊に殺される。

小林秀雄によれば、熊沢蕃山は、

古事記などの昔話は、あれはアレゴリーなんだ、と言ったそうであるが、

宣長は事実と信じた。

それは昔のひとのこころなんだ。

文字などを介さないで自分の記憶だけを信じるのが正しいんだ。

記憶よ語れ、とナボコフも自伝で言っている。

 Unthrifty loveliness, why dost thou spend

 Upon thyself thy beauty’s legacy?